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相続相談コーナー

1.「相続税」は誰もが納めなければならないのでしょうか?

2.「相続税と贈与税の概要」について解説して下さい。

3.「遺産分割の方法」について説明して下さい。(その1)

4.「遺産分割の方法」について説明して下さい・(その2)

5.「遺産分割協議の留意点」について説明して下さい。

6.「遺言書の具体的な書き方」について教えて下さい。

7.「外国に居住する日本人の相続登記手続」について説明して下さい。

8.「相続の放棄」について説明して下さい。

9.「ハンコ代の相場」について説明して下さい。

10.「相続税の対策としての養子縁組の留意点」について説明して下さい。

11.「相続税の期限内申告書を提出しない場合の特例の適用」について説明して下さい。

12.「公正証書遺言」を作成したいのですが、どのような資料や書類等が必要ですか?

13.「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)」について教えて下さい。

14.「法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)」について教えて下さい。  

15.「遺産分割調停の進め方」について教えて下さい。

16.「遺留分調停の進め方」について教えて下さい。

17.「特別受益」について教えて下さい。

18.「相続税のお尋ね」について教えて下さい。

19. 「無効な遺言の死因贈与への転換」について教えて下さい。

20. 「限定承認と譲渡所得税の関係」について教えて下さい。


※ 次に上記相談内容の解説がありますので御覧下さい。

1.「相続税」は誰もが納めなければならないのでしょうか?

 相続税額の算定は、所得税や法人税と同様な計算方法(亡くなられた方の遺産総額に直接税率を乗じて計算されるもの)ではなく、他の税目とは異なった特殊な方法により計算致します。その計算方法は、まず、相続税額を計算する前段階として、亡くなられた方の遺産総額から基礎控除額を控除します。

 この基礎控除額とは「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算される金額です。

 例えば、夫、妻、子供2人の4人家族のうち、夫が亡くなった場合、法定相続人は妻と子供2人となりますので、法定相続人数は3人となります。従って、上記算式から基礎控除額は4,800万円(3000万円+600万円×3人)となります。要点をシンプルにお話ししますと、相続税は遺産総額が基礎控除額以下である場合には課税されません。又、相続税を申告する(税務署に申告書を提出する)義務もありません。つまり、上記の例では、亡夫の遺産総額が4,800万円以下であれば相続税の心配はいらないことになります。

 ポイントは、基礎控除額がいくらになるかということに御留意することです。

 毎年、国税庁では税務の申告事績を公表しておりますが、相続税の課税割合は毎年4~5%位(税制改正後:基礎控除額の減額後は8%位)を推移しております。つまり、100人の方が亡くなられても相続税を納税する方の割合は8人弱位になります。相続税を納税される方は意外に少ないと思います。

 なお、相続税の申告事績は、財務省の「相続税、贈与税などの(資産課税等)に関する資料「相続税の課税状況の推移」及び国税庁の「統計情報」「平成29年分の相続税の申告状況について」において確認できます。

 相続税額の概算計算に関する詳細は、下記又は「経営者お役立ち情報」の「相続税・贈与税シミュレーション」の「説明コーナー」の項目を御参照下さい。

【PDF文書】をダウンロード → 「相続税の申告要否の簡易判定シート

相続税:相続税の申告のおおよその要否を判定「相続税の申告要否判定コーナー

その他、国税庁のHP「タックスアンサー」の下記コーナーを御参照下さい。

相続税「相続と税金」No.4102「相続税がかかる場合

相続税「相続税の計算と税額控除 」No.4152「相続税の計算

1.「相続税」を誰もが納めなければならないでしょうか?

2.「相続税と贈与税の概要」について解説して下さい。

①相続税と贈与税の概要

 相続税と贈与税は複雑で難解なものだと思います。まず、これらの基本的な事項につきましては、このホームページ内の下記項目を御参照の上、ご確認下さい。なお、本解説はTKC税務研究所によるものです。「経営者お役立ち情報」→「相続税贈与税のシュミレーション」→「説明コーナー」をご参照下さい。

②相続税と贈与税の解説

 相続税と贈与税の詳細な解説は、「国税庁」のホームページが最新かつ適切であると思いますので、「国税庁:パンフレット・手引 相続税・贈与税関係」「国税庁:相続税」をご参照下さい。

 なお、下記PDFは当事務所にて使用しております「概算正味遺産総額算出表」ですので、相続税を試算する際に御活用下さい。又、下記PDF「相続税額の具体的計算例」は、相続税の計算過程と相続税法の改正により大増税となった結果を表示したものです。

③「相続税額の具体的計算例」

 PDFの具体例は、相続人が配偶者と子2人の合計3人、被相続人の正味遺産総額(課税価格)が1億円、法定相続分に応じた遺産分割協議が成立した場合です。

 【(1)のケース】

 平成26年12月31日以前に相続が開始した場合ですが、納付税額は100万円、又、遺産分割の仕方により相続税の納付税額が、0円から200万円までとなります。

 【(2)のケース】

 平成27年1月1日以降に相続が開始した場合ですが、納付税額は315万円、又、遺産分割の仕方により相続税の納付税額が、0円から630万円までとなります。このことから、相続税の大増税となったことがお分かりになると思います。

 【(3)のケース】

 養子1名の縁組をして相続人が合計4人となった場合ですが、納付税額は、262.2万円、又、遺産分割の仕方により相続税の納付税額が、0円から524.8万円までとなります。このことから、(2)と比較して相続税の節税(基礎控除額の増加・税率の軽減)になったことがお分かりになると思います。

PDF

【PDF文書】をダウンロード →「概算正味遺産総額算出表」.pdf

PDF

【PDF文書】をダウンロード →「相続税額の具体的計算例」.pdf

2.「相続税の概要」について解説して下さい。

3.「遺産分割の方法」について説明して下さい。(その1)

 被相続人(亡くなった人)の遺産を分割する方法として、①指定分割 ②協議分割 ③調停・審判分割の3つがあるとされております。以下、この3つの分割方法を解説致します。

①指定分割(遺言書のある場合)
 被相続人(亡くなった人)は、生前に遺言で分割の方法や相続分を定めることができ、又遺言で遺産分割の方法や相続分を定めることを第三者に委託することもできるものとされております。被相続人の遺言書がある場合には、まず、この指定分割が優先されます。このため、昨今では遺言書の重要性が強調されております。

②協議分割(相続人全員の協議)
 被相続人の遺言書がない場合、遺言書があっても無効である場合や遺贈(遺言書による贈与)が放棄された場合には、共同相続人全員の協議により遺産を分割することになります。協議とは、お話し合いにより相談によって決定するということになります。又、相続人の全員が協議しなければならないところがポイントです。この協議分割が最も一般的な分割方法とされております。

③調停・審判分割(家庭裁判所の関与)
 遺産分割協議が調わない場合や遺産分割協議をすることができない場合には、家庭裁判所に対し、「
遺産分割調停」の申立てをすることができます。これは、遺産分割を裁判所の関与により解決する方法です。

 以上のとおり、まず、①遺言書があれば遺言書に従った被相続人の遺産の分割(指定分割)をすることになります。次に、②遺言書がない場合には、相続人全員による遺産分割協議(協議分割)をすることになります。最後に、③遺産分割協議がまとまらない場合(不調)な場合には、家庭裁判所の調停審判による分割協議(調停・審判分割)をすることができます。
 こうして見ますと、現実問題として、生前に遺言書が作成されていることが遺産分割をスムーズに進める近道であることがわかります。ただし、もし遺言書がなかったとしても、家庭裁判所には御世話にならず、相続人全員が仲良く遺産分割の協議をすることが最良の方法であると思います。

3.「遺産分割の方法」について説明して下さい。(その1)

4.「遺産分割の方法」について説明して下さい。(その2)

 遺産の分割には、①指定分割 ②協議分割 ③調停・審判分割の3つの方法以外にも、分類上の相違になりますが、次の方法もあります。

「全部分割」と「一部分割」

①全部分割
 被相続人(亡くなった人)の遺産の全部を一括して一度に分割してしまう方法です。実務上、一挙に解決できるこの全部分割の方法を利用する場合が多く、一般に衆知されていると思われます。

②一部分割
 被相続人の遺産の一部を部分的に分割する方法です。この方法は相続人全員が同意していれば有効な分割方法です。このため、必ずしも全部分割に固執する必要はないと思われます。例えば、相続債務の支払いのために遺産の一部を急遽売却しなければならないケースでは、遺産の一部分割をし、その後に残りの遺産についてじっくりと協議することもできます。


「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」

①現物分割(原則的方法)

 被相続人の遺産をそのままの形(現物をもって)で分割する方法です。例えば、A土地は長男、B株式は長女が取得するという分割の仕方です。又、1筆の土地を2筆に分筆(区分)して、東側部分の1筆の土地を長男、西側部分の1筆の土地を長女が取得することも、この方法となります。現物分割は、各遺産の価値が等価であることは少ないため、相続人間で、均等に分割できる可能性が低いので、相続人間に不平不満がつのりやすく、協議が調わないケースを見受けられます。

②代償分割

 代償分割とは、遺産分割に当たり共同相続人のうちの1人又は数人に遺産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の相続人に対して債務を負担する方法とされております。例えば、被相続人の遺産の全てを相続人のうちの1名が取得し、その相続人が他の相続人に代償として現金(代償金)を支払うことにより分割する方法です。代償分割は現金が一般的ですが、相続人所有の他の財産でも代替可能です。概して代償分割は、遺産を金銭的に換算して等価に分割したい場合、遺産の名義変更手続きを簡便化する場合、現物分割も換価分割も適当ではない場合等に選択される方法です。一方、現物分割、換価分割、代償分割の全ての方法を含んだ遺産分割も可能です。

 留意点として、代償金を支払う相続人に、支払うだけの資力がなければなりません。又、代償財産が現金である場合には相続税以外は課税されませんが、相続人所有の不動産等である場合には譲渡所得税や贈与税を考慮しなければなりません。遺産分割方法の長所短所を見定めて、相続人全員が納得できる協議をされるべきだと思います。

③換価分割

 被相続人の遺産を売却し、売却代金を分割する方法です。現物分割が困難か、不可能な遺産(例えば、農地、狭小な土地、変形した土地、書画骨董など)については、この方法が選択できるかと思います。被相続人の遺産の一部は現物分割し、残りは換価分割をすることも可能です。留意点として、遺産を売却し売却益が生ずる場合には、譲渡所得税を考慮しなければなりません。

④共有分割

 共有分割とは、遺産の全部又は一部を、共有状態によって取得する分割方法とされております。遺産分割とは、被相続人の死亡によって生じた共同相続人間の遺産共有状態を解消するために遺産を分配する手続きとされておりますが、共有分割は、単に共有状態にするだけの手続きにすぎません。遺産分割方法として現物分割、換価分割、代償分割を検討したところ、いずれも協議の成立が困難であった場合、相続人間の利害が一致しない・互譲ができない場合等、やむを得ない妥協案として共有分割を検討すべきものとされております。このため、遺産が共有の状態のままですので、管理や処分方法に問題が残ってしまいます。又、今後、遺産の共有状態を解消する場合には、共有物分割の手続き(再協議の必要性)によるものとされており、解決の先送り的な方法とされております。

4.「遺産分割の方法」について説明して下さい。(その2)

5.「遺産分割協議の留意点」について説明して下さい。

1.マイナスの財産(義務の承継)

 民法(電子政府の総合窓口イーガブ「法令索引検索」を御参照下さい。)第899条では「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人(死亡者)の権利義務を承継する。」旨が定められております。
プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も承継する点にご留意下さい。

2.法定相続分

 「相続分」については、民法第900条第1項第1号で「子及び配偶者(妻又は夫)が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。」、同項第4号で「子・・・が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。」とされております。
 遺言書、特別受益(贈与等)、寄与分(被相続人に対する貢献)等がなく、かつ相続人間において遺産分割協議が整わない場合の最終的な判断基準として、この法定相続分の規定があると考えられております。法律では、必ず、この法定相続分で遺産の分割をして下さいとは規定していないことにご留意下さい。

3.特別受益(遺贈・生前贈与等)

 特別受益(贈与等)がある場合には、民法第903条第1項で「共同相続人中に、被相続人から、遺贈(遺言による贈与)を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、(遺言による指定相続分又は法定相続分)から遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」とされ、同条第2項で「遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは,受遺者又は受贈者(贈与を受けた者)は、その相続分を受けることができない。」とされております。

 被相続人から贈与等を受けた相続人がいる場合には、他の相続人との公平の観点から、贈与等を相続分の前受けとして相続財産に加算し、加算後の相続財産をもって自己の相続分を算定すべき旨が定められております。結果として、贈与等を受けた相続人の相続分は、贈与等による前受け相当分が減額されることになります。又、法律では、必ず、この特別受益を考慮して遺産の分割をして下さいとは規定していないことにご留意下さい。

4.寄与分(貢献度)

 「寄与分」(被相続人に対する貢献)がある場合には、民法第904条の2で「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、(遺言による指定相続分又は法定相続分)に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」とされております。

 被相続人に対する貢献のあった相続人には寄与分が認められ、他の相続人との公平の観点から、被相続人に対する生前中の寄与分(貢献度)を相続財産から控除し、控除後の相続財産をもって、他の相続人の相続分を算定すべき旨が定められております。結果として、貢献のあった相続人の相続分は、寄与相当分が加算されることになります。又、法律では、必ず、この寄与分を考慮して遺産の分割をして下さいとは規定していないことにご留意下さい。

5.一切の事情

 以上1~4の規定を基準にし、さらに民法第906条では「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」旨が定められております。法律(民法)では、上記1~4を基準にして遺産の分割をすべき旨の規定をしておりますが、強制される規定ではありません。

6.自由な協議

 一方、上記1~4を基準とせず、例えば、法定相続分や遺言による指定相続分と全く異なる遺産分割協議をしても、相続人全員の自由意思に基づく協議であれば有効とされております。つまり、遺産分割協議は、相続人全員が参加し、かつ相続人全員の同意が得られるものである限り、自由に決めることができるものとされております。

 上記1~4はあくまでも目安です。これらの基準に固執するあまり、遺産分割協議が紛糾する例が見受けられます。これらの基準にとらわれず、相続人全員が仲良く協議をするべきだと思います。

5.「遺産分割協議の留意点」について説明して下さい。

6.「遺言書の具体的な書き方」を教えて下さい。

 遺言書は、遺言をなされる方の最終的な意思表示です。個人的な見解ですが、どのような内容を遺言書に記載しても良いと思います。しかも、遺言書は、遺言をなされる方の自由な意思に基づくものでなければならないとも思います。又、法律(民法等)上、遺言ができる事項が法定されております。つまり、法律として効力がある事項が決まっているのです。遺言書にどのような内容を記載しても良いと思いますが、記載した内容の全てに法律上の効力があるわけではないことを理解しておく必要があります。
 以下、その法定されている事項を列挙致します。遺言書に記載する内容として、これらの法定事項を御参考にして下さい。その他、「
日本公証人連合会のホームページ」(公証事務~Q&A~遺言)も参考になると思います。

① 推定相続人の廃除又は廃除を取消すこと。
(廃除とは、相続人となるべき者から相続する権利を喪失させる手続きです。)
② 相続分の指定又は相続分の指定を第三者に委託すること。
③ 遺産の分割方法の指定又は分割方法の指定を第三者に委託すること。
④ 遺産の分割を禁止すること。
⑤ 共同相続人間の担保責任を減免したり又は加重すること。
⑥ 遺言が遺留分を侵害する場合において遺贈の減殺方法を指定すること。
⑦ 遺贈(遺言による贈与のこと)
⑧ 遺産を拠出して一般財団法人を設立するための意思表示をすること。
⑨ 遺産を信託財産とすること。
⑩ 婚外子を認知すること。
⑪ 未成年者の後見人を指定すること。
⑫ 未成年者の後見監督人を指定すること。
⑬ 遺言を執行する者を指定すること、又はその指定を第三者に委託すること。
⑭ 生前に贈与した相続人に対する特別受益を遺産分割の際に遺産に含めないこと。
(持ち戻し計算を免除すること)
⑮ 祖先の祭祀を主宰する者を指定すること。

⑯ 生命保険金の受取人を指定すること、又は受取人を変更すること。


 なお、自筆証書遺言について民法第968条第1項では「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、これに印を押さなければならない。」とされ、同条第2項では「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」とされております。このことから、自筆にて遺言書を作成する場合の留意点(ポイント)を下記に列挙致します。なお、下記留意点(ポイント)の不備な自筆証書遺言は、無効になる可能性が高いので充分なご配慮をして下さい。

① 遺言書の「全文」を自筆で記載すること。

② 遺言書には作成した「日付」(年月日まで正確な日付)を自筆で記載すること。

③ 遺言書には遺言者の「氏名」(戸籍上の正確な氏名)を自筆で記載すること。

④ 遺言書には遺言者の「印」(実印等)を押すこと。

⑤ 遺言書の訂正の仕方が分からなければ、書き直した方が良いかと思います。

 なお、民法が一部改正され、平成31年1月13日以降、自筆証書遺言に財産の目録を添付する場合には、その目録については自筆で記載することを要しないこととされました。改正内容につきましては、法務省民事局のHP「自筆証書遺言に関するルールが変わります。」をご参照下さい。


 次に遺言書の具体的文例を掲げてみます。

【文例1】

1.私は、その所有する全ての財産を長男○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させます。

2.長男○○○○が、私よりも先に死亡した時は、その所有する全ての財産を孫□□□□(平成○年○月○日生)に相続させます。

3.私は、祖先の祭祀の主宰者として長男○○○○を指定します。

4.私が生前にした贈与及び遺贈については、民法第903条第3項の規定により持戻計算することを要しません。

5.私は、この遺言の執行者として長男○○○○を指定します。

【文例2】

1.私は、その所有する次の土地を甥□□□□(昭和○年○月○日生)に遺贈します。
 ① 富士市○○町3番18 宅地 200.00㎡
 ② 富士市○○町5番10 宅地 150.25㎡

2.私は、上記の土地を除くその所有する一切の財産を姪□□□□(昭和○年○月○日生)に遺贈します。

3.私は、受遺者□□□□を遺言執行者に指定します。

4.(付言)私は、受遺者□□□□及び□□□□が、遺言者の死後お互いに協力して遺言者の葬儀及び供養を執り行なうことを希望します。なお、私は祭祀を主宰すべき者に受遺者□□□□を指定します。

【文例3】

1.私は、その所有する次の財産を妻□□□□(昭和○年○月○日生)に相続させます。
 ① 富士市○○町1番1 宅地 300.00㎡
 ② 富士市○○町1番地1 家屋番号1番1 居宅 木造瓦葺平家建 150.00㎡
 ③ ○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○ ○○○○名義

2.私は、上記の財産を除くその所有する次の財産のほか、その余の財産全部を長男□□□□(昭和○年○月○日生)に相続させます。
 ① 富士市○○町3番5 宅地 165.00㎡

3.遺留分を減殺する場合には、まず、妻□□□□に相続させる普通預金からするものとします。

4.(付言)この遺言は、妻□□□□の生活に不安がないようにすることを第一の目的としたものです。又、遺言者夫婦とともに長男□□□□夫婦は、仲良く同居し家業に励み、かなりの事業資金も提供したので、できるだけ多くの遺産を分けてやりたいと考慮して配分を決めました。兄弟三人は、以上の趣旨を十分に理解し、この遺言を尊重して兄弟喧嘩をせず、お母さんに孝養を尽くし長男夫婦を守り立てて下さい。


遺言書を必ず作成すべき場合の例示

 遺言書を作成しない場合と作成しておいた場合とを比較すると、作成しておいたケースの方が様々なメリットがあると思われます。このため、皆様にはぜひとも遺言書を作成することをお薦め致します。特に、相続後のもめ事を回避するため、遺言書を必ず作成すべきだと思われるケースを以下に記載しますのでご参考にしてほしいと思います。

①夫婦間に子供がいない場合(推定相続人が配偶者の兄弟や甥姪となってしまう場合)

 普段、交流のない配偶者の親族との間で遺産分割協議を成立させることには困難が伴います。

②推定相続人に行方不明者がいる場合(所在不明者や連絡不能な相続人がいる場合)

 遺産分割協議書には相続人全員の実印や印鑑証明書が必要になります。

③推定相続人間が仲違いしており、遺産分割協議が紛糾する恐れがある場合

 遺産分割協議は相続人全員が協議しなければなりません。

④相続する権利がある者以外に相続してもらいたい人がいる場合

 相続権のない者に遺産を分けてあげたい場合には遺言書を作成する必要があります。

⑤特定の遺産を特定の相続人だけに相続してもらいたい場合

 遺言書がある場合には「指定分割」となり、相続人間の「協議分割」に優先します。

⑥会社経営者が自己の会社を存続させ承継者を指定したい場合

 会社の後継者に指定したい者に株式を優先的に相続させることができます。

6.「遺言書の具体的な書き方」を教えて下さい。

7.「外国居住する日本人の相続登記手続」について説明して下さい。

 国際化の進展により仕事の都合上、外国に居住される日本人の方が、増加する傾向にあります。この様な方が、日本国内の不動産に関する相続登記申請手続をする場合に書類上の問題が生じます。つまり、相続登記申請手続には印鑑証明書や住所を証明する住民票等が必要になりますが、日本人(日本国籍を有する者)が国外に居住し、日本国内に住所を有しない場合(住民登録がない場合)には、これらの書類が日本国内において発行されないということです。又、国外の日本大使館や領事館においても、原則的にこれらの書類は発行されない取扱いとなっております。このため、これらの書類に代わるものを次に記載する①から④の方法により取得し、不動産の相続登記申請手続に対応することになります。
 なお、下記の方法により取得した書類は、相続登記申請手続以外の他の相続に関する諸手続にも利用できます。


①「
日本大使館や領事館」において「証明書」を取得する方法
 国外居住地の日本大
使館や領事館において、登記に必要な書類(遺産分割協議書等)に本人の署名・捺印である旨の証明(署名証明書、署名及び拇印証明書、奥書証明書等)を受けることにより、その証明が印鑑証明書の代わりとなります。又、大使館や領事館で発行される在留証明書や居住証明書が住所を証明する住民票等の代わりとなります。

②国外居住地の公証人の証明書を取得する方法
 国外居住地の近隣に日本大使館や領事館がない場合、地元の公証人に対し、本人の署名に相違ない旨の証明(公証人の証明書・宣誓供述書等)を登記に必要な書類(遺産分割協議書等)に受けることにより、その証明書が印鑑証明書の代わりとなります。又、公証人の作成した住所を証明する書類が、住所を証明する住民票等の代わりとなります。

③「
日本の公証人」の証明書を取得する方法
 日本に一時帰国が可能な場合、日本国内の公証人に対して前記②の「国外居住地の公証人の証明書を取得する方法」と同様な手続を申請し、登記に必要な書類(遺産分割協議書等)に証明を受けたものや証明書(宣誓供述書等)が、印鑑証明書や住所を証明する住民票等の代わりとなります。

④日本の住民登録が一時的に可能な場合
 日本に帰国した際に一時的にでも住民登録が可能であれば、日本国内において印鑑証明書や住所を証明する住民票等を取得することができます。この方法が印鑑証明書等を取得する一番簡便な方法と思われます。しかしながら、国外において就労や長期滞在等を目的としたビザ(査証)を取得した日本人の方は、日本に帰国した際に一時的にでも住所地を日本に移動してしまうとビザ(査証)に影響を及ぼしますのでご留意して下さい。

7.「外国居住する日本人の相続登記申請手続」について説明して下さい。

8.「相続の放棄」について説明して下さい。

 相続の放棄をしようとする者は、相続開始を知った時から3ヶ月以内に、被相続人(亡くなった方)の住所地又は、相続開始地の「家庭裁判所」に申述しなければならないものとされております(民法938条、家事201条1項)。相続放棄の申述は、相続の開始によって自己に帰属すべき相続の権利義務を確定的に消滅させる相続人の意思表示とされております。従って、この意思表示は、家庭裁判所に対する申述(申し立てといってよいかと思います。)という方式をとらなければ、その効力を生じないものとされています。

 具体的には、相続放棄申述書を家庭裁判所に提出し、その申述が方式に適合し、申述人の真意に基づくものであることが確認され、受理がなされること(受理の審判)により相続の放棄の効力が生じます。

 以上、相続を放棄するとは、厳格な法律上の手続(要式行為)をすることを言います。このため「自己が相続するものは何もない旨の遺産分割協議書」に署名押印することが、一般的に相続を放棄することと思われておりますが、法律上の意味が異なることにご留意下さい。

 法律上の相続放棄をする具体例として、被相続人に返済不可能な借入債務がある場合、被相続人が多額の債務保証(保証人となっている)をしていた場合、相続人に遺産(価値のない農地や山林)を取得する意思が全くない場合に正式な手続を行うことが多いかと思います。

 ここで、御注意して頂きたい点として、被相続人の債務(マイナス財産)は、相続分に応じて相続人全員に帰属することです。たとえ、遺産分割協議により相続人中の1名の者が、被相続人の債務の全部を負担することになったとしても、債権者の同意がない限り、他の相続人が返済義務を負うことがあります。つまり、被相続人の遺産中に借入金や保証債務がある場合、全ての遺産(プラス財産及びマイナス財産)を特定の相続人(例えば長男)が遺産分割協議により取得及び負担しても、被相続人から承継した借入金の返済ができなかったり、保証債務の履行ができなければ、他の相続人が負担しなければならなくなります。ここに、被相続人の遺産を取得しなかった相続人が、法律上正式な相続放棄手続をする意味があると思います。

 相続放棄は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から「3ヶ月」以内に、家庭裁判所に申述し、受理することによって認められます。この「3ヶ月」という期間の制限は、相続開始から長期間経過後に相続放棄が認められると債権者などの関係者の利益を害することになるからです。又、「3ヶ月」の起算点は、通常は被相続人の死亡の日となります。しかしながら、死亡の日から3ヶ月経過後に被相続人に多額の債務(遺産の内容がわからなかった場合など)があることが判明した場合、家庭裁判所は、相続人がその債務の存在を知った時から「3ヶ月」を起算点とする解釈をする傾向にあります。こうしたケースでは、死亡の日から3ヶ月経過後であっても相続放棄が認められる可能性がありますので、相続放棄申述書を家庭裁判所に早急に提出する必要がありますのでご留意下さい。

 なお、相続放棄申述書の記載方法については、裁判所のホームページ・裁判手続の案内(家事事件)「相続放棄の申述」をご参照下さい。

8.「相続の放棄」について説明して下さい。

9.「ハンコ代の相場」について説明して下さい。

 相続が発生し被相続人(亡くなった方)の全財産を長男が取得し、いわゆる跡を継ぐことになりました。被相続人の遺言書はなく、他の相続人は家庭裁判所への正式な相続放棄の手続もしませんでした。この場合には、相続人全員で遺産分割協議をすることになりますが、長男以外の他の相続人は「自分は相続しない(相続するものはない)」ものとして、遺産分割協議書に署名押印することになります。この協議書に押印することに対し、長男が他の相続人に支払う金銭をハンコ代と言います。

 ハンコ代の法律的な意味は、被相続人の遺産の大半を長男が取得するため、長男が他の相続人に代償(ダイショウ)として現金を支払うことになりますので、遺産分割方法の一形態として代償分割を選択したものとされております。又、ハンコ代は、純粋に長男が他の相続人に贈与(謝礼)として現金を支払う場合もあるかと思います。その他、長男以外の他の相続人の相続分が少なくなりますので、少ない相続分でもハンコ代により我慢してもらうという意味(認諾料)もあるかと思います。

 まず、ハンコ代に相場はありませんし、法律上の規定もありません。遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してすることになっております。このため、ハンコ代についても、各相続人ごとに当然異なるものであると思います。つまり、遺産分割とハンコ代を考える際に下記のとおり様々な事情を考慮する必要があります。

(1) 旧制度である家督相続(戸主となる長男の全部相続)にこだわる相続人がある場合
(2) 被相続人から生前に多額の贈与を受けた相続人がある場合
(3) 被相続人の財産の推持又は増加について特別の寄与(貢献)をした相続人がある場合
(4) 相続分はあくまでも均等である旨を主張する相続人がある場合
(5) 御先祖様の墓守や祖先の祭祀を祭らなければならない相続人がある場合
(6) 被相続人の遺産には分割可能な金融資産がほとんどない場合等

 上記のとおり相続には様々な事情がありますので、ハンコ代は相続人間で互譲し、円満な話し合いを持ち、お互いが納得し説明ができる金額、つまり妥協点を見つけ、歩み寄って決定するものだと思います。しかし、ハンコ代の何らかの目安となる金額がなければ、相続人間の協議ができないと思います。
 ここで、敢えて、ハンコ代の具体的金額について考えてみたいと思います。

①ハンコ代の最低額・・・実費相当額
 実費相当額として印鑑証明書等の必要書類取得費用、交通費、会社を欠勤した場合の日当等の合計額(約3万円位)となります。

②ハンコ代の最高額・・・法律上の法定相続分相当額
 例えば、子2人と配偶者が相続人であり遺産総額が4000万円のケースでは、法定相続分は子が各4分の1(各1000万円)、配偶者は2分の1(2000万円)となります。

③遺留分を基準にする場合・・・法律上の遺留分相当額
 遺留分とは、長男に全部を相続させる旨の被相続人の遺言書があったとしても、相続人として最低限保障されるべき権利(相続分)とされています。上記②のケースでは、遺留分は子が各8分の1(各500万円)、配偶者は4分の1(1000万円)となります。

④遺留分の半分程度を目安にする場合
 被相続人の遺産に金融資産や換金化できる資産が少ない場合、本家を維持するための当座の資金が必要な場合等の諸事情があるケースでは、上記②や③の金額をハンコ代として支払うことが困難であると思われます。この場合には、分割可能な資金が不足している理由を説明の上、遺留分の半分程度を目安に我慢してもらってもよいのではないかと思います。上記②のケースでは、遺留分の半分は子が各16分の1(各250万円)、配偶者は8分の1(500万円)となります。

⑤ザックリ1本(泣きの1本)という考え方
 上記①~④の金額では相続人間において調整がつかない場合には、切りの良い金額、例えば1本とか(10万円・100万円)、2本とか(20万円・200万円)で『申し訳ありませんが納得してほしい』との協議(泣き)の申し入れをしても良いのではないかと思います。このケースでは、ハンコ代は当然手取り金額となりますので、相続税が課税される場合には、税金分も上乗せした金額を提供しなければならないと思います。

 なお、ハンコ代は税務上贈与税の対象となります。しかしながら、贈与税の基礎控除額は、1人当たり一暦年110万円ありますので、ハンコ代が110万円以下であれば問題にはなりません。この金額を超過する場合には、代償財産として遺産分割により取得した旨の証拠(遺産分割協議書にハンコ代として相続した金額の記載)があれば、相続税の対象とはなりますが、贈与税は非課税となります。

 最後に、相続人間においてハンコ代の協議がまとまらない場合、残念ながら、裁判所のお世話にならざるを得ないかもしれません。遺産分割調停の申立につきましては、裁判所のホームページ『裁判手続の案内』家事事件(相続に関する調停)「遺産分割調停」をご参照下さい。

9.「ハンコ代の相場」について説明して下さい。

10.「相続税の対策としての養子縁組の留意点」について説明して下さい。

 相続税の節税対策として、下記の効果があることから養子縁組をし相続人を増やすことが有利であると言われております。養子縁組は、特別な費用負担もなく、簡便で即時に効果のある節税対策であると思います。
ただし、相続税法上、被相続人に実子がいる場合の法定相続人に含める養子の数は1人とされ、実子がいない場合の法定相続人の数に含める養子の数は2人までと制限されております。

養子縁組による節税効果
①「
基礎控除額」の増加
 法定相続人1人分の600万円の基礎控除額が増加します。
②「
超過累進税率」の軽減
 相続人の増加により法定相続分が減少し適用税率が軽減されることがあります。
③「
死亡保険金」「死亡退職金」の非課税限度額の増加
 基礎控除額とは別の非課税限度額が法定相続人1人分の各500万円増加します。
④孫との養子縁組による相続税負担の回避
 孫と養子縁組をした場合、一世代(子の相続)飛び越すことにより相続税の課税(子の相続税)を回避することができます。但し、孫には「
相続税額の2割加算
」の適用があります。

 一方、相続税法第63条(相続人の数に算入される養子の数の否認)では、「・・・養子の数を・・・相続人の数に算入することが、相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、税務署長は、相続税についての更正又は決定に際し、税務署長の認めるところにより、当該養子の数を当該相続人の数に算入しないで相続税の課税価格・・・及び相続税額を計算することができる。 」とされております。
 従って、相続税対策としての養子縁組は、次のような【相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合】に留意する必要があると思います。

【相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合】
①相続開始直前の被相続人が重篤な状態の際、意思能力(縁組の意思)がなく縁組届が受理された場合
②認知症・精神疾患等の意思能力のない被相続人と養子縁組をした場合
③親族関係のない第三者と縁組をし遺留分を放棄させた場合
④遺留分を減少させる目的で多数の養子縁組をした場合

 養子縁組は身分行為であり、税務当局が養子縁組を否認することは事実認定の問題でもあるため、実際的には養子の数の否認の判断は難しいものであると言われております。

 なお、相続税の節税目的のための養子縁組が有効か無効かが争われた裁判で、最高裁判所は、平成29年1月31日、「節税目的のための養子縁組でも直ちに無効になるとは言えない」とする初判断を示しました。最高裁判所は、節税目的のための養子縁組を無効とした第2審の東京高等裁判所の判決を破棄する判決を言い渡したことにより、第1審の東京家庭裁判所の判決が確定しました。この結果、裁判所の判断は、節税目的のためだけの養子縁組を否定しないことなりました。

【PDF文書】をダウンロード → 「養子縁組届(富士市用)」

【PDF文書】をダウンロード → 「養子縁組届(記載例)」

 
その他、下記国税庁のホームページ(タックスアンサー)を御参照下さい。

No.4102「相続税がかかる場合」・・・相続税の基礎控除額

No.4152「相続税の計算

No.4155「相続税の税率」・・・相続税の超過累進税率

No.4157「相続税額の2割加算」 

No.4170「相続人の中に養子がいるとき

No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金

No.4117「相続税の課税対象になる死亡退職金

10.「相続税対策としての養子縁組の留意点」について説明して下さい。

11.「相続税の期限内申告書を提出しない場合の特例の適用」について

 被相続人から相続又は遺贈等によって遺産を取得した人の相続税の課税価格の合計額が、「遺産に係る基礎控除額」以下である場合には、相続税の申告をする必要はありません。しかし、相続税法の改正により、遺産に係る基礎控除額が40%も減少したので、相続税の申告をしなければならない人が大幅に増加致しました。基礎控除額は、改正前(5000万円+1000万円×法定相続人の数)、改正後(3000万円+600万円×法定相続人の数)となりました。

 「相続税の申告書の提出期限」は、相続人が相続の開始があったことを知った日(一般的には被相続人死亡日)の翌日から10ヶ月目の日となっております。このため、遺産を取得した相続人は、早々に相続税の申告をすべきか否かの判断をしなければなりませんので、被相続人の遺産(相続税の課税価格の合計額)が、基礎控除額を超過するか否かは切実な問題であると思います。

 相続税法には、数々の特例がありますが、そのうちの「小規模宅地等の特例」、「配偶者の税額の軽減」については周知されていると思います。小規模宅地等の特例の内の特定居住用宅地等は、330㎡までの面積までは相続税評価額の80%が減額される特例です。一方、配偶者の税額の軽減は、法定相続分に相当する遺産又は1億6000万円のいずれか多い方の金額の相続税額が控除される特例です。

 相続人の方々は、こうした相続税法上の特例があるので、これらの特例は何もしなくても当然適用され、相続税の課税価格の合計額が基礎控除額以下になる場合には申告が不要になると勘違いされている方が見受けられます。しかし、これらの特例は、あくまでも相続税の申告書を提出することによって適用される規定であることに留意して下さい。従って、仮に相続税の申告期限までに申告書(期限内申告)を提出しない場合、どのような対応をしたらよいかを検討したいと思います。

 まず、原則として、これらの特例を受けるためには、相続税の申告書を「所轄の税務署」(被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署)に提出することが要件とされております。この申告要件は、期限内申告(相続開始後10ヶ月内)だけではなく、期限後申告及び修正申告も含むものとされております。このため下記①及び②の場合(③を除く)においても、特例の適用が可能であるとされております。(相続税法第19条の2第3項、租税特別措置法第69条の4第6項)


①相続税の申告期限後に税務署から指摘を受け、相続人自らが申告をする場合(期限後申告)は適用が可能とされております。

②相続税の申告期限後に「税務調査」があり、申告内容について指摘を受け、期限内申告書において特例の適用をしていないことに気付き、相続人自らが修正申告を行う場合は適用が可能とされております。

③相続税の申告期限後に税務調査があり、申告内容について指摘を受け、期限内申告書において特例の適用をしていないことに気付いたが、相続人自らが修正申告を行わず、税務署の更正を受ける場合には適用が不可とされております。

 さらに、これらの特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限までに、相続人間で遺産分割協議が成立していることが要件とされております。

 以上のことから、①相続税の申告書を期限内に提出していない場合で、かつ②相続人間で遺産分割協議が成立していない場合、又は③遺産分割協議は成立していたが相続税の申告期限後であった場合、原則としてこれらの特例の適用は受けられません。

 しかし、①相続税の申告書を期限内に提出していない場合でも、②相続税の申告期限までに相続人間で遺産分割協議が成立し、相続登記(不動産に関する名義変更登記申請手続)等まで完了していた場合には、期限後申告・修正申告であったとしても、これら特例の適用は可能となります。

 つまり、 申告要件というよりも、申告期限までに遺産分割協議が成立しており、それを客観的に証明できること(例:相続登記等の完了)が要件と言い換えた方が分かりやすいかと思います。

なお、以下の国税庁HP「タックスアンサー」をご参照下さい。

NO.4102「相続税がかかる場合

NO.4124「小規模宅地等の特例

NO.4158「配偶者の税額の軽減

NO.4205「相続税の申告と納税

11.「相続税の期限内申告書を提出しない場合の特例の適用」について

12.「公正証書遺言」を作成したいのですが、どのような資料や書類等が必要ですか?

 遺言を公正証書で作成するために、あらかじめ必要とされる書類は次のとおりです。

☆ 遺言者(遺言をする方)

 ・印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)

 ・遺産に不動産がある場合

  ①不動産登記事項証明書

  ②固定資産税の納税通知書、名寄帳、固定資産評価証明書等

 ・遺産に不動産以外の財産がある場合

  ①預貯金通帳、有価証券等

  ②遺産の概略の記載されたメモ等(銀行・証券会社等の名称・支店名、預貯金の残高・有価証券の内容株数等)

☆ 受遺者(遺産を貰う方)が相続人である場合(相続させる場合)

 ・遺言者と相続人との続柄のわかる戸籍謄本、改製原戸籍、除籍謄本等

☆ 受遺者(遺産を貰う方)が相続人以外である場合(遺贈する場合)

 ・受遺者の住民票

☆ 証人(2名以上)

 ・証人の運転免許証コピー、住民票(証人の本人確認資料として住所、氏名、生年月日の分かるもの)

 ・証人の職業のわかるメモ書等

☆ 遺言執行者(後記③を御参照下さい。)

 ・遺言執行者の住所・氏名・生年月日・職業のわかるメモ及び住民票

① 公正証書遺言の概要
 昨今、相続(争族?)対策のために、遺言の重要性が叫ばれております。遺言の方式は、色々ありますが、この遺言のうち、費用もかからず最もお手軽に作成できるものは、自筆証書遺言とされております。ところが、この自筆証書遺言は、遺言者自らの自署にて作成するものですので、方式の不備があって無効になったり、紛失したり、関係者に改ざんされる恐れもあり、安全確実な方法とは言えないと思います。このため、最も安全で確実とされる公正証書遺言が、クローズアップされてきております。
 公正証書遺言は、遺言をする人が遺言の内容を公証人に伝え、これを公証人が法律に基づく文書にまとめ、遺言をした人への内容の確認後に公正証書とし、公証人が保管するものです。この公正証書遺言は、法律の専門家であり、法務大臣が任命する公務員とされます公証人が作成するものです。従って、公正証書遺言の作成手続きは、法律の形式に則った厳格なものとされております。

② 証人2名以上の立会の必要
 公正証書によって遺言を作成する場合には、証人2人以上の立会が必要とされております。あらかじめ、公正証書遺言の作成時に公証人と同席することが可能な証人を最低2名依頼しなければなりません。未成年者、推定相続人(相続人となるべき方)、受遺者、推定相続人と受遺者の配偶者及び直系血族(身内の方)、未成年者、被後見人は、証人にはなれませんので注意が必要です。又、適当な証人がいない場合には、司法書士や公証人と相談して下さい。

③ 遺言執行者の選任
 遺言執行者とは、相続が発生した後に、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をすることができる者とされております。つまり、遺言書に記載されているとおりに遺言の内容を実現してくれる方のことをいいます。従って、この遺言執行者をあらかじめ遺言書で定めておくと、相続発生後の手続きがスムースに運びます。このため、遺言執行者を選任されることをお勧め致します。遺言執行者には、遺言によって遺産を貰う相続人、受遺者、立会の証人、司法書士等も指定することができます。

④ 公証人との打合せ
 公正証書遺言は、遺言の内容にもよりますが、公証人役場で即日に交付してもらうことは性質上、困難だと思われます。このため、あらかじめ公証人と事前に打ち合わせをする必要があると思います。前記の「遺言を公正証書で作成するためにあらかじめ必要とされる書類」を公証人に事前に提出し、遺言の内容の検討、作成日時や作成費用等を相談することをお勧め致します。

⑤ 公正証書遺言の作成当日
 公証人と事前に打ち合わせをし、その後に予約をした作成当日には、遺言者及び証人2名が公証人役場に出頭致します。公証人と事前の打ち合わせが済んでいるため、遺言書の原案ができております。公証人と遺言者が、この遺言書の読み合わせをし、遺言者の真意と同一内容であれば、あとは署名押印するだけです。作成当日に必要なものは、遺言者の実印、証人2名の各認印及び公証人に支払う作成費用となります。
 なお、遺言者が病気等で公証人役場に出頭できない場合には、公証人に出張して頂くことも可能です。但し、別途公証人の出張手数料、日当及び旅費の負担が発生致します。

その他、公正証書につきましては、「
日本公証人連合会」ホームページの「遺言」をご参照下さい。

12.「公正証書遺言」を作成したいのですが、どのような資料や書類等が必要ですか?

13.「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)」について教えて下さい。

 平成25年度の税制改正により、平成27年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について大規模な改正がなされました。改正の主な内容は下記のとおりです。

① 遺産に係る基礎控除額の引き下げ・・・改正前の60%相当額減額(増税)

  改正前  5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
  改正後  3000万円+( 600万円×法定相続人の数)
  具体例
  法定相続人・・・妻及び子2人の場合(合計3人)
  改正前  5000万円+(1000万円×3人)=8000万円
  改正後  3000万円+( 600万円×3人)=4800万円・・・差額3200万円

 留意点
 遺産の総額が基礎控除額以下であれば相続税の申告は不要です。 従って、平成27年1月1日以降に相続が開始した場合、上記の具体例では遺産の総額が8000万円以下であっても4800万円以上であれば相続税の申告と納税をする必要が生じました。

② 相続税の税率構造・・・税率の引上げ(増税)
 相続税額は、各法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定した取得金額に税率を乗じて計算します。この取得金額が、2億円を超え3億円以下の場合の税率が40%から45%に、6億円を超える場合の税率が50%から55%に引き上げられました。

③ 未成年者・障害者控除の控除額の引上げ(減税)
 改正前の未成年者控除額は,相続人である未成年者が20歳になるまでの1年につき6万円の控除額でしたが、改正後は10万円に引き上げられました。
 一方、改正前の障害者控除額は、相続人である障害者が85歳になるまでの1年につき6万円(特別障害者の場合12万円)でしたが、改正後は10万円(特別障害者の場合20万円)に引き上げられました。

 留意点
 相続人が、相続開始時に障害者の認定を受けていない場合でも、申告期限までに認定を受ければ障害者控除が認められます。例えば、相続人の年齢が55歳で特別障害者に認定された場合には600万円の相続税額が軽減されます。

④ 小規模宅地等の特例の限度面積の拡大(減税)
 ☆ 特定居住用宅地等(居住用の宅地等)
 改正前の本特例適用対象となる限度面積は、240㎡(約70坪)でしたが、改正後は330㎡(約100坪)に拡大されました。例えば、100坪(相続税評価額1000万円・@1坪10万円)の自宅の場合、改正前の本特例適用後の評価額は、約70坪分につき減額割合が80%ですので700万円×20%+300万円=約440万円でした。改正後の本特例適用後の評価額は、約100坪分につき減額割合が80%ですので、1000万円×20%=約200万円となります。

 ☆ 居住用と事業用の宅地等を選択する場合の適用面積の拡大
 改正前の特定居住用宅地等の本特例適用対象となる限度面積は240㎡、特定事業用等宅地等の限度面積は400㎡でした。この特例の一方を選択又は両者を合算して適用してもその限度面積は合計400㎡までとなっておりました。一方、改正後は、特定居住用宅地等の限度面積は330㎡となり、特定事業用等宅地等の限度面積は400㎡になりました。さらに、この両者の特例を適用し合算した場合の限度面積は730㎡に拡大されました。

⑤ 相続時精算課税
 改正前の本特例の適用対象者となる贈与者(贈与をした者)の年齢は、贈与をした年の1月1日現在において65歳以上でしたが、改正後は60歳以上に引き下げられました。又、改正前の本特例の適用対象者となる受贈者(贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上の者)は、贈与を受けた時において贈与者の推定相続人(相続人となるべき者)でなければなりませんでした。改正後は、贈与を受けた時において贈与者の推定相続人及び孫も含まれることになりました。

 留意点
 この特例の適用対象となる贈与者及び受贈者の年齢は、贈与日ではなく、贈与をした年の1月1日現在で判定することにご留意下さい。

⑥贈与税(暦年課税)の税率構造・・・税率の変更
 相続時精算課税制度を選択しない一般の贈与(暦年課税)の場合の贈与税額は、一暦年一人当たり110万円の基礎控除額を控除した課税価格に税率を乗じて計算されます。この一般の贈与の課税価格が、1000万円を超え1500万円以下の場合の税率が50%から45%に引き下げられ、3000万円を超える場合の税率が50%から55%に引き上げられました。(一般税率の場合)

 又、歴年課税の場合において、直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与により財産を取得した受贈者(贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上の者)に係る贈与税の税率は、一般税率とは別の特例税率が設けられました。一般税率との相違点は、課税価格が300万円を超え400万円以下の場合には税率が20%から15%、400万円を超え600万円以下の場合には税率が30%から20%、600万円を超え1000万円以下の場合には税率が40%から30%、1000万円を超え1500万円以下の場合には税率が50%から40%、1500万円を超え3000万円以下の場合には税率が50%から45%に引き下げられ、4500万円を超える場合には税率が50%から55%に引き上げられました。

 なお、詳細につきましては国税庁のホームページ「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)をご参照下さい。

13.「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)」について教えて下さい。

14.  「法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)」について教えて下さい。

 法務省は、不動産(土地や建物)の相続による名義変更を促進するために、「法定相続情報証明制度」を新設し、平成29年5月29日から施行致しました。相続による不動産の名義変更は、登記の申請手続をしなければなりませんが、この手続きには法定相続人は誰であるかを証明する戸籍・原戸籍・除籍等の関係証明書類が必要とされております。新制度は、法務局の認証した【法定相続情報一覧図】の写しがこれら戸籍等の関係書類に代えることができる証明書とされ、登記の申請手続に利用できるものとされます。従って、法務局が認証し亡くなった方(被相続人)の法定相続人の情報についての【法定相続情報一覧図】の写しがあれば、相続による登記の申請手続に利用できるだけではなく、銀行、証券会社、生命保険会社等の相続手続きにも利用が可能なため、その活用が期待されております。又、【法定相続情報一覧図】を取得された場合には、「よくある御質問 1.相続登記・相続手続きに必要な書類を教えて下さい。」で御説明した書類のうち、②~⑥(戸籍・原戸籍・除籍等の関係証明書類)は不要となります。

 新制度のメリットは、次の点にあると思われます。まず、【法定相続情報一覧図】の写しの交付は無料であることです。次に、法定相続人は誰であるかを証明する戸籍・原戸籍・除籍等の一連の関係証明書類を一度入手し、法務局へ【法定相続情報一覧図】の保管及び一覧図の交付の申出をし、【法定相続情報一覧図】の写しの交付がされる条件が整えば、再度何通もの戸籍・原戸籍・除籍等の証明書類を取得する必要がなくなることです。今後、本制度が使い勝手の良いものになることを期待しております。

その他、下記法務省民事局のホームページをご参照下さい。

①「法定相続情報証明制度について

②「法定相続情報証明制度が始まります!

③「法定相続情報証明制度の具体的な手続きについて

④「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例 

14.  「法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)」について教えて下さい。

15.  「遺産分割調停の進め方」について教えて下さい。

 被相続人(亡くなった人)の遺産の分割方法は、①指定分割 ②協議分割 ③調停・審判分割の3つがあることは、既にお話ししました。まず、遺言書があれば遺言書に従った被相続人の遺産の分割(指定分割)をすることになります。次に、遺言書がない場合には、相続人全員による遺産分割協議(協議分割)をすることになります。最後に、遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の調停や審判による分割協議(調停分割・審判分割)をすることができます。
 この最後の調停分割・審判分割は、遺産分割協議がまとまらない場合や遺産分割協議をすることができない場合には、家庭裁判所に対し、まず、遺産分割調停の申立てをすることができます。遺産分割調停は、申し立てをしたことがない方も多く、裁判所の手続きですので御心配や御不明な点が多いと思われます。以下、遺産分割調停を申し立てた後の家庭裁判所の手続きの進め方につきましてご説明したいと思います。


【調停の進め方について】

 調停手続きの流れは、下記とおりです。調停は原則として火曜日又は金曜日に行われ、1回当たりの調停時間はおおむね2時間程度です。調停の期日には、申立人(調停を申し立てた人)は申立人専用待合室、相手方(申し立てられた相手方)は相手方専用待合室でそれぞれが待機し、調停委員の指示により、交互に又は同時に調停室に入室します。調停室では、2人の調停委員と裁判官が、公正中立な立場で、申立人・相手方双方のお話しを聴き、話合い(調停)を進めていきます。なお、審判を申し立てた場合においても、調停手続きが先行することがあります。

① 調停の申立(申立人による裁判所への申立書類の提出)

② 裁判所からの調停期日の連絡(申立人・相手方との期日の調整)

③ 調停期日(初回)・(続行)・(再続行)・(再々続行)・・・

④ 合意ができた場合・・・調停成立

⑤ 合意ができなかった場合・・・調停不成立 →→→ 審判手続


以下に、調停期日における具体的な手続き内容をご説明致します。


Ⅰ.「相続人の範囲」の確認手続き

 遺産分割は、相続人全員による協議をしなければなりませんので、まず、相続人が誰であるかを確認致します。 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本等により相続人が誰であるかを確認致します。しかし、戸籍の記載が事実と異なり(養子縁組の無効、親子関係不存在、被相続人の隠し子があった場合等)、相続人の範囲に問題がある場合には、人事訴訟等の別の手続きが必要になります。

 なお、相続人の中に認知症などで意思能力・判断能力に問題がある場合には、遺産分割をすることができませんので、成年後見等の手続きにより代理人となる成年後見人の選任手続きが必要となります。


Ⅱ.「遺産の範囲」の確定手続き

 原則として、遺産分割調停の対象となる遺産は、①相続により取得したもの。②被相続人の死亡した時点において存在しているもの。③調停申し立て時(遺産分割時)においても現存するもの。④未分割であるもの。⑤積極財産であるもの。とされており、その遺産の範囲を合意により確定します。

 【遺言書】がある場合や一部の遺産について既に成立している【遺産分割協議書】により、遺産の分け方が決まっている財産は、未分割の遺産ではないので、遺産分割調停の対象にはなりません。又、誰かが遺産を隠したり、勝手に使ってしまったという場合には、遺産分割以外の手続きが必要になります。つまり、「遺産分割調停の対象となる遺産」と「遺産分割調停以外の手続き(訴訟手続等)が必要になる遺産」とは区別しなければなりません。

 遺産分割調停は、家事事件手続法の別表第二調停事件とされているため、遺産分割調停の対象となる遺産は上記①~⑤のとおりに限定されており、それ以外の遺産は、相続人全員の同意がない限り、調停の対象外とされていることにもご留意下さい。


Ⅲ.「遺産の評価」の確認手続き

 遺産分割の対象となる遺産を相続人間で公平に分割するためには、遺産を金額的に換算する必要があります。遺産を評価することにより金額的に換算し、その評価額を合意により確定します。遺産のうち預貯金等の金融資産であれば評価上の問題はほとんどありません。一方、土地や建物等の固定資産については何を基準として評価額を算定すべきかの問題があります。例えば、土地の場合には、固定資産税評価額、公示価格、相続税評価額等の評価額がありますので、どの評価額を基準として遺産の評価額とするかの合意が必要になります。なお、この合意が相続人間できない場合には、不動産鑑定士等の専門家による鑑定の手続きが必要になります。鑑定費用については、鑑定を主張する方が別途負担しなければなりませんので、あらかじめ裁判所に費用を納めることになります。


Ⅳ.「各相続人の取得額」の確定手続き

 被相続人の遺産の範囲が確定し、確定した遺産の評価方法により評価することにより、被相続人の遺産総額が確定します。この確定した遺産総額を各相続人の法定相続分に基づいて算定した金額を各相続人の取得額とする決定をします。ただし、法律の条件を満たす特別受益(生前贈与等)や寄与分(被相続人に対する貢献度合等)が認められる場合には、これらを考慮して各相続人の取得額を修正します。


Ⅴ.「遺産の分割方法」の確定手続き

 被相続人の確定した遺産総額を各相続人の法定相続分により算定した取得額を基準として、相続人全員の合意に基づいて遺産を分割し、調停が成立する運びとなります。遺産の分割方法には、現物分割(物そのものを分ける方法)、代償分割(物を分けますが、差額を金銭で調整する方法)、換価分割(売却して金銭で分配する方法)などがあります。

 以上の各手続きに相続人全員が合意できれば、遺産分割調停が成立することになります。


Ⅵ.「審判手続」への移行について

 遺産分割調停における話し合いが残念ながらまとまらず、調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続きが開始されます。裁判官が、申立人及び相手方双方から聴いた事情や裁判所に提出された資料等の一切の事情を考慮して、審判(実質的な裁判)がなされます。


その他、下記裁判所のホームページをご参照下さい。

① 家事事件「遺産分割調停

② 家事事件「遺産分割調停の申立書

③ 名古屋家庭裁判所「遺産分割調停手続きのご利用にあたって」 

15.  「遺産分割調停の進め方」について教えて下さい。

16.  「遺留分調停の進め方」について教えて下さい。

 遺留分とは、一定の範囲の相続人に保障された相続財産のうちの一定の割合であって、被相続人の贈与や遺贈によって奪われることのないもの(権利)とされております。遺留分を有する一定の範囲の相続人とは、遺留分権利者といい、相続人のうち、兄弟姉妹(甥姪を含む)を除く相続人とされております。又、相続財産のうちの一定の割合とは、遺留分割合といい、相続人が直系尊属だけの場合には3分の1、その他の場合には2分の1とされ、遺留分を有する相続人が複数名いる場合には、この遺留分割合に法定相続分を乗じたものが、各相続人の遺留分となります。

 遺留分の規定は、被相続人の贈与や遺贈という財産処分の自由を制限するものですが、遺留分を侵害する贈与や遺贈が当然に無効になるわけではなく、遺留分権利者から自己の権利を保全する限度において贈与や遺贈の効力を消滅させることができる権利(遺留分侵害額請求権)とされております。

 遺留分侵害額請求の具体例ですが、被相続人が自己の財産全部を長男に遺言による贈与(遺贈)をした後に死亡し、被相続人の死亡後に他の相続人が自己の遺留分を長男に対して請求する場合などです。遺留分の侵害額請求は、当事者間の話し合い(協議)で解決できれば問題はありませんが、協議がまとまらない場合や協議ができない場合には家庭裁判所に対して遺留分に関する調停を申し立てることができます。次に遺留分調停についてお話し致します。

 なお、民法の一部が改正され、令和元年7月1日以降、「遺留分減殺請求権の行使(物件的な請求権)」から「遺留分侵害額請求権の行使(金銭的な請求権)」に変更されました。なお、改正内容につきましては、法務省民事局HP「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」をご参照して下さい。


【調停の進め方について】

 調停手続きの流れは、下記とおりです。調停は原則として火曜日又は金曜日に行われ、1回当たりの調停時間はおおむね2時間程度です。調停の期日には、申立人(調停を申し立てた人)は申立人専用待合室、相手方(申し立てられた相手方)は相手方専用待合室でそれぞれが待機し、調停委員の指示により、交互に又は同時に調停室に入室します。調停室では、2人の調停委員と裁判官が、公正中立な立場で、申立人・相手方双方のお話しを聴き、話合い(調停)を進めていきます。なお、審判を申し立てた場合においても、調停手続きが先行することがあります。

① 調停の申立(申立人による裁判所への申立書類の提出)

② 裁判所からの調停期日の連絡(申立人・相手方との期日の調整)

③ 調停期日(初回)・(続行)・(再続行)・(再々続行)・・・

④ 合意ができた場合・・・調停成立

⑤ 合意ができなかった場合・・・調停不成立 →→→ 審判手続


以下に、調停期日における具体的な手続き内容を説明致します。


Ⅰ.「遺留分侵害額請求権行使」の確認

① 遺留分調停の申立人が遺留分権利者であることの確認をします。申立人が、被相続人の配偶者、直系卑属(子、代襲相続人である孫等)、直系尊属(父母、祖父母等)、すなわち被相続人の相続人であることの確認をします。ただし、被相続人の兄弟姉妹や甥姪は遺留分権利者ではないことにご留意下さい。

② 被相続人が、遺言によって財産を処分したり、生前贈与をしたことを確認します。

③ 遺留分権利者が、被相続人の死亡と自分の遺留分が侵害されてことを知った時から1年以内に減殺請求権の行使の意思表示をしたことを確認します。


Ⅱ.「遺留分」の算定

① 遺留分は、下記算式により算定されます。

(相続開始時の遺産総額+生前贈与総額-相続債務総額)×遺留分割合=遺留分

② 特別受益額の加算・・・被相続人が生前贈与した財産のうち、申立人を含む相続人が被相続人から贈与を受けた財産は特別受益(民法903条)とされ、原則として、遺留分算定の基礎となる財産に加えて計算します。

③ 寄与分の除外・・・被相続人に対する各相続人の寄与分(特別の寄与・貢献度、民法904条の2)は、遺留分の算定上、考慮されません。


Ⅲ.「遺留分侵害額」の算定

① 遺留分権利者個々の遺留分侵害額は、下記算式により算定されます。

(上記Ⅱの遺留分の金額)-(特別受益額+遺贈額+相続による取得額)+承継した相続債務額=遺留分侵害額

② 遺贈額・・・遺言による贈与される金額


Ⅳ.「遺留分侵害額の対象・順序・効果」

① 遺留分は、まず遺贈から減殺します。

② 複数の遺贈がある場合には遺贈の価格の割合に応じて減殺します。

③ 贈与等は、遺贈の減殺後に減殺します。

④ 遺贈・贈与等は、遺留分侵害部分について効力を失い、遺留分権利者は、その限度で権利(遺留分)を取得します。


Ⅴ.「現物返還」又は「価額弁償」

① 調停の相手方は、申立人である遺留分権利者に遺留分の現物返還をします。(改正前)

② 調停の相手方は、現物返還ではなく、価額弁償(金銭による弁償)を選択することができます。

③ 調停の相手方が、現物を既に処分していた場合には処分時の価額の弁償を選択することができます。


以上の各手続きに調停の申立人及び相手方両者の合意できれば、遺留分調停が成立することになります。


Ⅵ.「審判手続」への移行について

 遺留分調停における話し合いが残念ながらまとまらず、調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続きが開始されます。裁判官が、申立人及び相手方双方から聴いた事情や裁判所に提出された資料等の一切の事情を考慮して、審判(実質的な裁判)がなされます。


その他、下記裁判所のホームページをご参照下さい。

① 家事事件「遺留分減殺による物件返還請求調停」(令和元年7月1日より前に開始した相続)

② 家事事件「遺留分侵害額の請求調停」(令和元年7月1日以降に開始した相続)

16.  「遺留分調停の進め方」について教えて下さい。

17.「特別受益」について教えて下さい。

 「遺産分割調停の進め方」や「遺留分調停の進め方」の項目で、特別受益が論点になることをお話しました。共同相続人の中に、被相続人から相続分の前渡しとみられるような生前贈与や遺贈(遺言による贈与)を受けた者がある場合、この生前贈与や遺贈の事実を考慮しないで相続分を計算すると、相続人間では不公平な結果が生じてしまいます。こうした不公平な結果が生じない遺産分割協議や遺留分減殺請求をするためには、特別受益がどのようなものであるかを検討する必要があると思います。まず、以下に記載します民法第903条第1項の特別受益の規定から確認してみましょう。

 「共同相続人中に。被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、・・・・」とされ、端的に【遺贈】や【贈与】が特別受益とされております。これでは、お分かりにくいので具体例を挙げて、特別受益に該当するか否かを以下に御説明したいと思います。なお、本説明は東京家庭裁判所家事第5部の「特別受益Q&A」を参照致しました。

① 結婚の際の贈与

 被相続人が、結婚の際、相続人に渡した「持参金」や「支度金」は、金額が大きければ、一般的には特別受益に該当しますが、「結納金」や「挙式費用」は、特別受益には該当しません。


② 居住用不動産の贈与・その取得のための金銭の贈与

 被相続人が、相続人に対する居住用不動産の贈与や、居住用不動産を取得するための金銭の贈与は、生計の基礎として役立つような贈与であり、特別受益に該当します。


③ 貸付金

 被相続人が、相続人に貸した金銭(貸付金)は、贈与ではないため、特別受益には該当しません。相続人には貸付金を相続した者に返済する義務があります。


④ 小遣い・生活費・遊興費

 被相続人が、相続人に渡した「小遣い」や「生活費」は、通常、扶養の範囲内であるため、特別受益には該当しません。又。「遊興費」としての贈与も、特別受益には該当しません。なお、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があるとされております(民法第877条第1項)。


⑤ 新築祝い・入学祝い

 被相続人が、相続人に対して渡した「新築祝い」や「入学祝い」は、親としての通常の援助の範囲内でなされた御祝儀であれば、特別受益には該当しません。


⑥ 学資(大学等の高等教育を受けるための費用)

 被相続人の相続人に対する「学資(入学金、授業料、教科書代等)」は、被相続人の生前の経済状況や社会的地位を考慮すると、相続人を大学等へ通わせることは親としての扶養の範囲内にあると思われる場合や、共同相続人全員が同程度の教育を受けている場合には、特別受益には該当しないものとされることが一般的です。又、「海外留学費用」等についても、同様に考えられる場合には、特別受益には該当しないものされることが一般的です。


⑦ 生命保険金

 被相続人が保険金受取人を相続人とした生命保険契約を締結し、死亡保険金を相続人が受け取った場合、原則として、特別受益には該当しません。ただし、例外的に、被相続人の遺産総額や遺産構成全体からみて、保険金を受け取る相続人と受け取らない相続人との間で、とても見逃すことができないほどの金額的に大きな隔たりがあり、相続人間に公平性が保てないような特別な事情がある場合には、特別受益に準じた取扱いがなされる場合があります。


⑧ 債務の肩代わり(代位弁済)

 被相続人が相続人の債務を肩代わりして支払った場合(代位弁済)には、通常は、その相続人に対して求償する(返済を求める)ことができるので、肩代わりしただけでは特別受益に該当しません。ただし、被相続人が求償権を放棄したような場合で、肩代わりした債務の金額が遺産の前渡しといえる程高額な場合には、特別受益に該当します。


⑨ 死亡退職金

 被相続人の死亡退職金については、労働協約や就業規則により、死亡退職金を受け取る遺族(相続人)の生活保障という趣旨が明らかなときは、特別受益に該当しません。他方、個人企業の役員が死亡した場合のように、死亡した本人の長年の功績に報いるという色彩が強く、退職金額も多額になる場合には、特別受益に該当するものとされることがあります。


⑩ 遺族給付

 被相続人の死亡にともない相続人に支払われる遺族給付金のうち、遺族の生活保障のために支払われるものは、特別受益には該当しません。


⑪ 被相続人の土地の無償使用

 相続人が、被相続人の土地の上に建物を建築して所有し、被相続人に対して土地の賃料を支払っていなかった場合には、「使用借権」に相当する金額の特別受益があったものとされるケースが多くあります。ただし、相続人が、その建物に被相続人と同居していた場合には、特別受益に該当しない可能性があります。なお。特別受益に該当する場合であっても、特別受益とされる金額は、使用借権相当額(更地価額の10%~30%位まで)であり、賃料相当額(相当賃料額×使用年月数)とはされません。


⑫ 被相続人の建物の無償使用

 相続人が、被相続人所有の建物に無償で居住していたとしても、被相続人と同居していた場合には、家賃相当額は特別受益には該当しません。又、相続人が、被相続人と同居していなかった場合にも、一般的に特別受益に該当しないものとされ、家賃相当額が特別受益に該当するようなことはありません。


⑬ 相続人の子や配偶者への贈与

 被相続人が相続人ではない者(相続人の子や配偶者等)に贈与をした場合は、原則として特別受益に該当しません。ただし、形式的に贈与を受けた名義人が相続人の子や配偶者であったとしても、実質的に相続人への贈与である場合には、特別受益とされる可能性があります。


【PDF文書】をダウンロード → 東京家庭裁判所家事第5部「特別受益Q&A

17.「特別受益」について教えて下さい。

18.「相続税のお尋ね」ついて教えて下さい。

 相続の発生後、しばらくすると税務署はいわゆる【相続税のお尋ね】(正式には、「相続税の申告等についての御案内」「相続についてのお尋ね」「相続税のあらまし」等の書類を言います。)という書類を相続人の全員宛ではありませんが発送します。税務当局はなぜ相続が発生したことを知っているのかと驚かれる相続人もいますが、これは相続税法58条の規定があるからです。相続税法58条は、通称「ゴッパチ」と呼ばれる通知書を送付する規定です。この相続税法58条を簡単に御説明致しますと、「死亡届が市区町村役場に提出された場合、市区町村は、その死亡情報を最寄りの税務署に報告して下さい」というものです。このため、人が死亡した情報は漏れなく税務署に報告されます。その後、税務署内で被相続人に関連する各種支払調書、KSKシステム内の資産情報、過去の申告実績等を調査して相続税の申告義務がありそうな相続人の代表者宛に【相続税のお尋ね】という書類を送付しております。もし、このような規定がなければ、市区町村が税務署へ個人情報を漏洩しているということにもなりかねませんので、あらかじめ相続税法の中で法律として定めているのです。

 【相続税のお尋ね】が送られてきた場合、税務当局から脱税や不正が疑われているわけではなく、相続人が遺産の内容を確認・精査し、相続税の申告を促す目的があります。又、【相続税のお尋ね】に対する回答は義務ではありませんが、回答するに越したことはありません。すでに税理士に相談しており相続税の申告の準備をしている場合には、【相続税のお尋ね】には回答しなくても良いと思います。つまり、相続の発生から10か月以内の相続税の申告期限までに申告をすることにより【相続税のお尋ね】に対する回答になるからです。

 一方、相続税を計算して、相続税額が0円であった場合においても、【相続税のお尋ね】が送られて来ることがあります。税務当局は、一定額以上の財産があり、相続税を納める義務があると見込まれる方に対して【相続税のお尋ね】を送付します。このため、【相続税のお尋ね】に相続税額が0円である旨の回答をし、相続税がかからないことを説明すべきだと思います。

 通常、相続税の支払い義務のあることがあらかじめ分かっている方は、税務署から【相続税のお尋ね】の通知が届く前に相続税申告の手続きを進めていると思います。このため、【相続税のお尋ね】が届いてから申告義務があることに気づいて申告作業を始める場合には、相続税の申告期限が迫っていることが多いと思いますので早急に対応する必要があります。

 又、思わぬ誘惑により相続税の課税を免れようとして【相続税のお尋ね】に対し虚偽の回答をしてしまった場合でも、そのことだけで罰せられることはないと思います。しかしながら、相続税の申告期限後に税務調査があり、財産を隠していたと判断されれば、相続税本税に加えて40%の重加算税等の罰金が課せられる可能性があります。万が一【相続税のお尋ね】に虚偽の回答をしてしまった場合には、速やかに適正な内容の相続税の申告書を提出すべきだと思います。たとえ【相続税のお尋ね】に対する虚偽の回答をしてしまったとしても、相続税申告書の内容が適正・適切であれば罰金が課せられることはないと思います。肝心なことは、相続税の申告義務がある方は、真正な内容であり、財産を包み隠さない適正な相続税申告書を税務署に提出することだと思います

【PDF文書】をダウンロード → 「相続税の申告等についての御案内

【PDF文書】をダウンロード → 「相続についてのお尋ね

【PDF文書】をダウンロード → 「相続税のあらまし

 

相続税法 第58条(市町村長等の通知)

第1項 市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪(しっそう)届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。

第2項 前項の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第9項第1号(法定受託事務)に規定する第一号法定受託事務とする。


地方自治法 第2条

第9項 第1号 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)

第9項 第2号 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)

第10項 この法律又はこれに基づく政令に規定するもののほか、法律に定める法定受託事務は第一号法定受託事務にあつては別表第一の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に、第二号法定受託事務にあつては別表第二の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に掲げるとおりであり、政令に定める法定受託事務はこの法律に基づく政令に示すとおりである。


別表第一 第1号法定受託事務(第2条関係)

相続税法(昭和25年法律第73号)

第58条第1項の規定により市町村が処理することとされている事務

 

 なお、「法定受託事務」とは、国から地方公共団体への機関委任事務が廃止されたことに伴い、本来は国が果たすべき役割に係る事務のうちで、適正な処理を確保するため例外的に、法律又はこれに基づく政令により、国に代わって地方公共団体が処理することとされている事務であると、地方自治法 第2条第9項に規定されています。どのような事務が法定受託事務に該当するかについては、同法第2条第10項に基づく別表第1に、対象となる法律の条項が示されています。さらに、法定受託事務には、法令によって国から都道府県、市町村、特別区に処理を委任された事務(第一号法定受託事務)と、都道府県から市町村・特別区に委任された事務(第二号法定受託事務)の2種類があります。

19.「無効な遺言の死因贈与への転換」ついて教えて下さい。

 自筆証書遺言は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、これに印を押さなければならない。(民法第968条第1項)」とされております。さらに「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。(民法第968条第2項)」とされ、厳格な手続きが必要とされております。もっとも、遺言書は、遺言者の最終的な意思表示(単独行為)であり、死亡後に効力が生ずるものですので、要件が厳格(厳格な要式行為)であることも御理解できるものだと思います。このため、遺言者が、生前、苦労してやっと自筆証書遺言を書かれたとしても、法定の要件に適合しなければ遺言書は無効になってしまうこともあります。こうした場合には、他に何か良い方法はないものでしょうか。ここに、遺言としては無効であり、若しくは遺言そのものがなかったとしても「死因贈与」が認められる可能性(無効行為の転換)があります。

 まず、贈与契約とは「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。(民法第549条)」とされております。次に、死因贈与契約とは、「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。(民法第554条)」とされております。つまり、死因贈与契約とは、【当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がこれに受諾の意思を表示した後、贈与者の死亡によって効力を生ずる契約】とされています。こうしたことから、死因贈与契約には遺言とは異なった次の特徴があります。

【死因贈与契約の特徴】

① 契約無効のリスクが少ないこと・・・遺言には厳格な方式規定があるため、特に自筆証書遺言の場合には無効になるリスクがあります。一方、死因贈与契約には方式規定がない(後記に説明あり)ため、契約が無効になるリスクが少ないと考えられております。

② 契約であること・・・死因贈与契約は契約行為ですので、受贈者は贈与者の意思表示に対する受諾が必要になります。このため、贈与者の生前、受贈者に贈与の内容や趣旨を理解してもらえる機会があり、受贈者とともに契約内容を作り上げることもできます。

③ 負担・条件の付与・・・死因贈与契約に贈与者の死後、贈与の見返りとして受贈者に贈与に対する負担や条件(例:同居の約束・扶養の約束等)を付けることが可能となります。

④ 秘匿性・・・死因贈与契約は契約行為ですので、受贈者は贈与者の意思表示に対する受諾が必要になります。このため、贈与者の財産処分の内容は、明らかにしなければならず、死後まで秘密にしておくことはできません。 

⑤ 生前の仮登記・・・受贈者は、贈与財産が不動産である場合、贈与者の生前、贈与者の死亡を始期とする仮登記をすることができます。この仮登記をすることにより、贈与者が贈与不動産を受贈者の承諾なく処分したり、死因贈与契約そのものを撤回したりすることを抑制・防止する効果が期待できます。

⑥ 手続費用・・・不動産の名義変更登記の登録免許税額は、相続人に対する遺贈の場合は固定資産税評価額の0.4%ですが、死因贈与の場合は相続人であっても固定資産税評価額の2%となります。又、不動産取得税は、相続人に対する遺贈は免税になりますが、死因贈与の場合は相続人であっても課税されます。

 死因贈与契約は、口頭でも成立する契約ですので、特に書面にする必要はないものとされております。民法第554条では、「・・・その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。」とされております。この点に関して最高裁の判例では「死因贈与の方式については、遺贈に関する規定の準用はない。」と判断されております(最判昭32年5月21日民集11巻5号732頁)。つまり、死因贈与の効力については遺贈に関する「規定」に従うべきことが法令で定められておりますが、死因贈与の契約の「方式」についてまでも遺言の方式に関する規定に従うべきことを定めたものではないとされております。従って、遺言書が方式違背によって遺言として無効であったとしても、死因贈与契約の意思表示の趣旨が遺言書の文言に含まれていると認められ、かつ、これに対する受贈者(受遺者)の受諾の意思表示の事実関係が認められる場合には、「無効行為の転換」として死因贈与契約の成立が認められる可能性があります。次に、無効な遺言が死因贈与と認められる可能性につきまして検討したいと思います。

【無効な遺言の死因贈与への転換可能性】

① 死因贈与の申し込みがあったことが認められる可能性

「遺言者の生前に遺言書の現物を贈与者に交付していた場合」、遺言書が死因贈与の申し込みをしていた書面(贈与者の贈与の意思表示していた書面)として推定される可能性があります。

② 贈与書面として認められる可能性

 判例上、民法第550条の贈与(書面によらない贈与の規定)の成立要件は、贈与者と受贈者との間で、「贈与の書面」が作成されたことまでも必要とされておりません。又、「受贈者の受諾の意思表示についての書面」が作成されたことまでも必要とされておりません。このことから、無効な遺言書であったとしても、その遺言書をもって民法第550条の贈与があったと推定される可能性があります。なお、民法第550条は、「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りではない。」とされております。

③ 受贈者の受諾意思があったことが推認される可能性

 死因贈与の契約成立の要件が、贈与者の贈与の意思表示及び受贈者の受諾の意思表示であるため、「受贈者が遺言者の生前に遺言の内容を知っていた場合」には、死因贈与契約の成立が推認される可能性があります。

 以上のことから、遺言者が、生前に遺言書の現物を受遺者(遺言による受贈者)に交付し、受遺者が遺言書を開封して遺言の内容を知っていた場合、死因贈与契約の成立が推認される可能性が非常に高いものになると思われます。


その他参考書式

【Word文書】をダウンロード → 「死因贈与契約書」   

【PDF 文書】をダウンロード → 「死因贈与契約書

【Word文書】をダウンロード → 「上申書(死因贈与)」契約書が作成されていない場合

【PDF 文書】をダウンロード → 「上申書(死因贈与)」契約書が作成されていない場合

20.「限定承認と譲渡所得税の関係」ついて教えて下さい。

 民法第915条第1項では「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」と規定されております。つまり、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月(熟慮期間)以内に、①「単純承認」、②「相続放棄」、③「限定承認」をしなければなりません。これらについて見方を変えた場合、相続人は、この3つの方法のいずれかを選択することができることになります。又、相続人は、3ヶ月の熟慮期間以内に、「単純承認」「相続放棄」又は「限定承認」のいずれかを選択することを決定できない諸事情がある場合には、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」の申立を行うことにより、3ヶ月の熟慮期間をさらに伸長をすることができます。以下に「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の特徴を見てみましょう。

 まず、①「単純承認」とは、相続人が被相続人(死亡者)のプラスの財産(不動産・預貯金などの所有権等の権利)やマイナスの財産(借入金・未払金などの義務)の全てを受け継ぐ相続の仕方をいいます。一般的な相続は、被相続人の全ての遺産を相続人が受け継ぐことになりますので、法律上は「単純承認」したことになります。

 次に、②「相続放棄」とは、相続人が被相続人の権利や義務の一切を受け継がない相続の仕方をいいます。被相続人が、多額の借入金のあるまま死亡し、正味の遺産総額が明らかにマイナスになる場合、相続人のほとんど方は相続放棄をし、借入金の支払いを免れる手続きをすると思われます。相続放棄の手続きは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことを家庭裁判所に申述することですので、借入金の支払いを免れることができます。

 最後に③「限定承認」について、民法第923条では「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。」旨が規定されております。「限定承認」とは、被相続人の債務がどの程度あるのか不明であり、財産が残る可能性がある場合、相続人が相続によって得た財産の限度において被相続人の債務の負担を受け継ぐ相続の仕方をいいます。このため、「限定承認」はマイナスの財産をプラスの財産の範囲内で相続する仕方、言い換えれば借金は引き継がない方法ですので、相続人に都合のよいものであると考えられます。

 ただし、「限定承認」をした場合、被相続人の準確定申告(いわゆる死亡時の確定申告)において、譲渡所得税に関する申告をする必要があります。つまり、限定承認を行ったケースで、例えば被相続人が不動産を所有していた場合、相続開始時に被相続人から相続人に対して時価相当額でその不動産(相続財産)の譲渡があったものとみなされますので、この譲渡所得に関する準確定申告をしなければなりません。さらに、この準確定申告は、被相続人の相続の開始があったことを知った時から4ヶ月以内にしなければなりません。 所得税法第125条第1項では、年の中途で死亡した場合の確定申告に関する規定が定められております。その条文は、「居住者が年の中途において死亡した場合において、その者のその年分の所得税について第120条第1項(確定所得の申告に関する規定)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、第3項の規定による申告書を提出する場合を除き、政令で定めるところにより、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4月を経過した日の前日(同日前に当該相続人が出国をする場合には、その出国の時)までに、税務署長に対し、当該所得税について第120条第1項各号に掲げる事項その他の事項を記載した申告書を提出しなければならない。」とされております。

 ここで留意すべき点として、家庭裁判所への「限定承認」の申述をする前に所得税の準確定申告書を所轄の税務署に提出することは、被相続人の租税債務(所得税の納税義務)の確定行為として民法第921条第1項第1号の「処分行為」に該当し、法定単純承認に該当する恐れがあります。つまり、民法第921条第1項第1号では「次に掲げる場合には、相続人は単純承認したものとみなす。相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。」とされているからです。

 以上、「限定承認」は、「単純承認」や「相続放棄」にはない相続人に有利なメッリトだけがある相続の仕方ではなく、税務申告をしなければならない点、譲渡所得税を納税する義務が発生する点、法定単純承認に該当する可能性等に充分留意する必要があると思います。


下記裁判所のホームページ(裁判手続の案内)もご参照下さい。

① 家事事件 相続に関する審判 「相続の放棄の申述

② 家事事件 相続に関する審判 「相続の限定承認の申述

③ 家事事件 相続に関する審判「相続の承認又は放棄の期間の延長

下記の国税庁ホームページ「タックスアンサー」もご参照下さい。

NO.2022 「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」

NO.3105 「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」      

21.「遺言書を必ず作成すべき場合」について教えて下さい。

 「遺言書の具体的な書き方」でも御紹介いたしましたが、遺言書を作成するメリットは多々あると思われます。遺言者の最終的な意思表示としても有用な法律行為ですので、皆様にはぜひとも遺言書を作成することをお薦め致します。特に、相続後に相続人間で「もめ事」が起こる可能性が高い場合には、この「もめ事」を回避するためにも遺言書を必ず作成すべきだと思います。次に「もめ事」を回避すべきケースを御紹介致しますので参考にして戴ければ幸いです。

①遺言者の夫婦間に子供がいない場合(推定相続人が配偶者の兄弟や甥姪となってしまう場合)

 普段、交流のない配偶者の親族との間で遺産分割協議を成立させることには困難が伴います。

②遺言者の推定相続人(相続する権利がある者)に行方不明者がいる場合

  遺産分割協議書には相続人全員の実印や印鑑証明書が必要になります。このため、例えば、所在不明者や連絡不能な相続人がいる場合には遺産分割協議をすることができません。

③遺言者の推定相続人間で仲違いしており、遺産分割協議が紛糾する恐れがある場合

 遺産分割協議は相続人全員で協議しなければなりません。遺産分割協議が紛糾した場合には遺産分割ができないことになります。

④遺言者を相続する権利がある者以外に相続してもらいたい人がいる場合

 相続権のない者に遺産を分けてあげたい場合には遺言書を作成する必要があります。

⑤特定の遺産を特定の相続人だけに相続してもらいたい場合

 遺言書がある場合には「指定分割」となり、相続人間の「協議分割」に優先します。

⑥会社経営者が自己の会社を存続させ承継者を指定したい場合

 会社の後継者に指定したい者に株式を優先的に相続させることができます。