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(対象地域 富士市、富士宮市
沼津市 静岡市清水区)
1.不動産を売却した際の譲渡所得税を節税する方法はありますか?
2.建物増改築時の「住宅ローン控除」の適用について説明して下さい。
3.建物増改築による持分の訂正の手続きについて説明して下さい。
4.破産状態にある債務者が不動産を任意売却した場合の税金について説明して下さい。
5.相続税の節税対策としての毎年110万円の贈与について説明して下さい。
6.住宅取得等資金の贈与に関する非課税の特例について説明して下さい。
7.不動産の購入時の契約書や領収証等を紛失した場合の譲渡所得の申告について解説して下さい。
8.土地と建物を一括して購入している場合の取得価額の区分の方法について解説して下さい。
9.居住用財産の譲渡に係る3000万円控除の特例について教えて下さい。
10. 空き家の譲渡に係る3000万円控除の特例について教えて下さい。
11. 宅地の時価評価(相場の算定)の方法について教えて下さい。
12. 自宅を売却した場合の住宅ローン控除の適用について教えて下さい。
13. 借名財産、名義財産等について教えて下さい。
14. 障害者控除と障害者控除対象者の認定について教えて下さい。
15. 贈与・相続直後に売却した場合の贈与税・相続税について教えて下さい。
16. 負担付贈与の課税関係について教えて下さい。
17. 離婚にともなう財産分与の課税関係について教えてください。
18. 傾斜地の宅地造成費について教えて下さい。
※ 次に上記相談内容の解説がありますので御覧下さい。
まず最初に、税金(譲渡所得税)は、売却した代金(売った値段)に対して課税されるものと誤解されている方が意外に多いと思います。税金(譲渡所得税)は、売却した代金(売った値段)に対して課税されるものではなく、「売った時の売却代金」から「買った時の購入代金等」を控除した「利益(儲け)」に対して課税されるものです。従って、損をして(赤字で)売却した不動産であれば、いくら高額で売却したとしても税金は課税されないことに御留意下さい。
例えば、10年前に5,000万円で購入した土地を3,000万円で売却した場合には、3,000万円という多額の入金があったとしても、2,000万円の赤字ですので税金は課税されません。売却代金3,000万円という多額な金額に惑わされないで下さい。ただし、建物については「減価償却費」という時間の経過による価値の減少分を考慮する必要があります。例えば、10年前に3,000万円で新築した建物を2,300万円で売却した場合には、700万円の赤字ではなく、減価償却費が800万円と算定されたと仮定すれば100万円の黒字[2,300万円-(3,000万円-800万円)=100万円]となり、他に経費がないとすれば税金が課税されることになります。
次に、利益(儲け)が生じた場合の譲渡所得税を節税するためには、【売却時】の代金、経費等についての契約書類、領収書、資料等とともに、【購入時や取得時】の代金や経費等についての契約書類、領収書、資料等も同時に必要になります。つまり、購入時や取得時から売却時までの契約書類、領収書、請求書、見積書、申告書、納付書、その他各種の資料等が多数あれば、利益(儲け)を圧縮できる可能性が高まります。このため、契約書類、領収書、資料等の全てを税理士に開示し、ご相談されることをお勧め致します。税法上の特例を適用できる可能性も高まると思います。なお、古い資料等を紛失してしまった場合でも、口頭にて経緯をご説明して戴ければ税理士が疎明資料を作成したり、再生したり、探し出すことができる可能性もあります。記憶だけでも結構ですので、物件に関する取得、維持管理等の経緯のご説明もされることをお勧め致します。お客様が所持しない証明書類や資料等でも、役所、売主、不動産業者や第三者が保管、所持していることもあるからです。譲渡所得税の節税は、諦めずに【関係資料】を丹念に探し出すこと、【お金の流れの記憶】を呼び戻すことが肝要かと思います。
そのほかに、不動産を売却するか否かの検討段階においても、税理士に相談することをお勧め致します。この事前相談により、税法上の特例適用(節税)のアドバイスを受けることができると思います。
なお、国税庁の下記「タックスアンサー」も御参照下さい。
譲渡所得 土地建物を売ったとき No.3202 「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
譲渡所得 土地建物を売ったとき No.3208 「長期譲渡所得の税額の計算」
譲渡所得 土地建物の取得費と譲渡費用 No.3252 「取得費となるもの」
譲渡所得 土地建物の取得費と譲渡費用 No.3255 「譲渡費用となるもの」
譲渡所得 土地建物を売ったとき No.3233 「譲渡所得の特別控除の種類」 ☆☆
まず、具体例として、父親所有の自宅家屋が老朽化し手狭になったため、同居の長男が住宅ローンにより借り入れをし、長男の全額拠出により自宅家屋のリフォームをするという事例でご説明致します。この場合に、長男が所得税の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けることができるかどうかの検討を致します。まず、所得税の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の対象となる増改築とは、次の3つの要件を充足していることが必要とされております。
①自己が所有している家屋であること
②自己の居住の用に供する家屋であること
③その他一定の要件に該当する工事であること
ここで重要な点は、①の自己が所有している家屋であることです。
父親所有の家屋に所有者ではない長男が全額拠出し増改築をしても、税法上の要件を充足しないため、特別控除を受けることはできません。つまり、父親所有の建物名義を長男の名義に変更し、上記①の要件の「自己が所有している家屋であること」という要件を充足する必要があります。その方法として以下の方法が考えられます。
①リフォームの契約をする前に、父親名義を長男名義に贈与や売買等により名義変更をする方法
父親名義を長男名義に変更する方法では、贈与税や譲渡所得税が課税されることが予想されますのでご注意下さい。ただし、建物の固定資産税評価額が110万円以下であれば、建物の贈与税評価額は固定資産税評価額の1.0倍とされておりますので、贈与税の心配はなく名義を変更することが可能です。ポイントは、建物の固定資産税評価額をチェックすることだと思います。この固定資産税評価額は、毎年4月中旬頃に市役所から建物所有者宛に送付されます固定資産税納税通知書が参考になります。
②リフォームの契約をする前に、父親所有建物の一部を長男に贈与や売買等をする方法
所有とは共有の状態も含まれるため、一部の名義(持分)だけを変更して親子共有とすれば、特別控除の要件をクリアーすることができます。贈与税が課税されない範囲で父親の名義の一部(持分)を長男に贈与することが、現実的で実行可能であると考えます。
なお、「贈与税の基礎控除額」は一暦年一人当たり110万円であることと、建物の贈与税評価額は固定資産税評価額と同額であることに留意し、名義変更する持分をご検討下さい。又、この持分は、長男(受贈者)の持分比率が大きくなるほど、住宅ローン控除を受けられる税額が増加することにも御留意下さい。
その他、国税庁の下記コーナーも御参照下さい。
「質疑応答事例」
所得税 税額控除 12「父親が所有する家屋について増改築した場合」
「タックスアンサー」
所得税 No.1216「増改築等をしたとき(住宅借入金等特別控除)」
贈与税 No.4408「贈与税がかかる場合」
贈与税 No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
下記PDF「住宅ローン控除の対象となる増改築」は、当事務所がお客差に説明する際、実際に使用しているものです
【PDF文書】をダウンロード →「住宅ローン控除の対象となる増改築」
父親が自己所有の建物を増改築し、父親自身が増改築資金の全額を拠出した場合には、建物の所有者に変更はなく資金の拠出者も同一人物ですので税金の課税上の問題は生じません。ところが、父親名義の建物に長男が増改築した場合、増改築部分の権利は法律上、建物の所有者である父親のものになります。従って、長男が増改築資金の全額を拠出し、父親が長男に対して何等の支払いもしない場合には、父親は長男から増改築資金の贈与を受けたものとみなされ「贈与税」が課税されます。
そこで、この贈与税が課税される問題をクリアーするためには、既存の建物部分と増改築した部分の評価をして、増改築した部分の評価額に相当する建物の持分を父親から長男に移転し、2人の共有にする登記申請手続が必要になります。このような手続をしなければならない理由は、一つの建物になした増改築である以上、既存の建物部分(父親名義)と増改築した部分(長男名義)とに区分し、別々の名義(別々の登記記録)にすることが現行の登記制度ではできないからです。
ここで、共有持分を計算するためには、既存の建物の時価評価額を算出するとともに、増改築資金(リフォーム請負金額等)を確定しなければなりません。既存の建物の時価相当額を算定する方法は、建築当初の請負金額等から償却費相当額を控除する方法、贈与税評価額を斟酌する方法、不動産鑑定士の評価、不動産会社(建築会社)の査定額等が考えられます。
これらにより算定した持分が、仮に父親4分の1(既存の建物の時価相当額:例えば400万円の場合)、長男4分の3(増改築部分の時価相当額:例えば1200万円の場合)となった場合を考えてみます。この例での贈与税の問題を解決する方法は、父親が既存の建物の持分4分の3(400万円×3/4=300万円)を長男に譲渡し、その譲渡代金は長男が拠出した増改築資金のうち父親が負担すべき持分4分の1に相当する金額(1200万円×1/4=300万円)と相殺する代物弁済契約を締結致します。この代物弁済契約(300万円相当額)による父親から長男への持分移転登記申請手続をすることにより、親子2人共有となり、贈与税が課税される問題はクリアーできると思われます。
その他、国税庁の下記コーナーも御参照下さい。
「タックスアンサー」
贈与税 親子間の土地の無償使用 No.4557「親名義の建物に子供が増築したとき」
「質疑応答事例」
相続税・贈与税 贈与財産の範囲 4.「父所有の家屋に子が増築した場合の贈与税の課税関係」☆☆
御参考までに、下記PDF「建物増改築による持分更正手続」は、当事務所がお客様に説明する際、実際に使用しているものです。なお、建物の時価相当額は、贈与税評価額を斟酌した方法です。
【PDF文書】をダウンロード →「建物増改築による持分更正手続」
下記PDF「登記原因証明情報」は、当事務所が登記申請手続をする際、実際に使用しているものです。
【PDF文書】をダウンロード →「登記原因証明情報:代物弁済」
「所得税法」第9条第1項第10号では「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における・・・強制換価手続による資産の譲渡による所得その他これに類するものとして政令で定める所得」については所得税を課さないとされております。
又、政令である所得税法施行令第26条では「・・・資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、・・・強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられたものとする。」とされております。
以上のことから、債務超過が常態化し破産状態にある債務者が、自己の債務の弁済に充てるため自己の不動産を任意に売却し、その売却代金を当該債務の弁済に充当した場合には、譲渡所得税は課税されない旨の規定がなされております。
この規定に該当すると認められる事例は、昨今の経済情勢下では、少なからず存在すると思われます。もし、この規定に該当したとしても、誤って課税所得金額がある譲渡所得税の確定申告をしてしまった場合には、所得税が課税されることになりかねません。後日、破産宣告がなされ免責許可決定が確定したとしても、所得税は租税ですので免責の効力が及ばない結果になる可能性がありえます。こうした事例では、税務当局とのトラブルを回避するためにも、確定申告書を提出すべきか否かについて十分留意しなければならないと思います。
その他、国税庁の下記コーナーも御参照下さい。
「タックスアンサー」
譲渡所得税 譲渡所得のあらまし No.3105 「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
「法令等」
所得税関係 所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係 [強制換価等による譲渡(第10号関係)]☆☆
贈与税には、一暦年1人当たり110万円の基礎控除額があることは周知されていると思います。この基礎控除額を活かして、毎年110万円以下の贈与を繰り返して実行することは、節税になることも周知されていると思います。この方法は、実務上、相続税が課税されない方々の争族?(相続)対策として贈与税を節税し、生前に名義変更ができるため、とても有効な手段とされております。ところが、相続税の対策としては、“やらないよりはましである”という程度のものと考えられている節もあります。つまり、多額の資産を有する方々にとっては、大きな節税効果を期待することはできず、いわば焼け石に水の状態と思われているからです。
しかし、将来の相続税の負担が避けることができない方々にとっては、相続税の最低税率が10%であることから、多少の贈与税の負担を覚悟して効率的な贈与を実行することが賢明であり、相続税の節税ができると思います。
例えば、贈与税評価額が310万円相当分を贈与した場合の贈与税は20万円となります。
(310万円-110万円)×10%=20万円
贈与税の実効税率は、20万円÷310万円≒6.5%となり、相続税の最低税率よりも低くなります。
又、贈与税評価額が510万円相当分を贈与した場合の贈与税は50万円となります。
(510万円-110万円)×15%-10万円=50万円 【18歳以上の受贈者が直系尊属から贈与された場合の税率:贈与税改正点】
贈与税の実効税率は、50万円÷510万円≒10%となり、相続税の最低税率と同率となります。ただし、留意すべき点として、相続税の実効税率及び贈与に伴う諸手続き費用(登記費用、登録免許税、不動産取得税等)も加味し、一歴年1人当たりの贈与税評価額を検討すべきであると思います。
さらに、贈与対象者は1人に限らず、複数人に毎年贈与することも必要であると思います。例えば、4人に対して毎年贈与税評価額300万円分を10年に渡って贈与した場合には、1億2000万円分の相続財産を減少させることができます。つまり、贈与税評価額は、基本的に相続税評価額と同額であるためです。
又、超高額資産家は、相続税及び贈与税の最高税率はともに55%ですので、億単位の贈与を実行しても税負担は変わらないことになります。この場合に贈与をするときのポイントは、値上がりしそうな資産や高収益な資産を孫へ一世代飛ばして贈与すればその効果は絶大なものとなります。生前に贈与をする暦年贈与は、相続税対策として必要なものだと思います。
なお、令和5年度の税制改正では相続税と贈与税の一体的な見直しがありました。上記の相続税対策は今後も活用できるものですが、この税制改正により、今後の相続税対策も大幅な見直しをする必要があります。具体的な改正点は、相続開始前3年間の贈与財産を相続財産に加算する規定の見直し、相続時精算課税制度の改正などです。これらの改正点についての詳細は、別のコーナーで取り上げたいと思います。
その他、国税庁の下記コーナー等を御参照下さい。「パンフレット・手引」 相続税・贈与税関係 税制改正
「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)」
「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(令和5年6月)」
「タックスアンサー」
贈与税 贈与と税金 No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
贈与税 贈与と税金 No.4410 「複数の人から贈与を受けたとき(暦年贈与)」☆☆
税制が改正され、住宅の新築、建売住宅の購入、優良な中古住宅の取得、住宅の増改築工事等(以下「住宅取得等」といいます)に要する住宅取得等資金のうち一定金額まで贈与税が非課税となる「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」の特例が変更され、住宅取得等資金を令和8年12月31日までの間に取得した場合にまで期間が延長されました。
特例の非課税枠は、令和6年1月1日から令和8年12月31日までが500万円となり、良質な建物(一定の省エネ住宅や耐震住宅等)を取得した場合にはこの非課税枠に500万円が上乗せされ、1000万円とされました。住宅取得等の資金の贈与については、一定の適用要件の充足と申告書等を提出することを条件として、贈与税が課税されないものとなっております。なお、令和4年1月1日からは、昭和57年1月1日以後に建築された中古住宅を取得した場合についても、この特例が適用されることになり、注目すべき改正点だと思います。
住宅取得等をする場合には、かなりの出費を要します。このため、父母や祖父母からの資金的な援助を受けることができれば、計画的に余裕をもって住宅取得等の実現が可能になると考えられます。一方、子供や孫が住宅取得等をしたいので、その資金の援助を考えられている方もいらっしゃると思われます。しかしながら、子供や孫に資金を贈与すれば、原則として贈与税が課税されることになります。贈与税は、一暦年(1月1日~12月31日)1人当たり110万円の基礎控除(非課税枠)しかなく、税率も累進税率(最高55%)による課税方式ですので、負担の重いものとなっております。
こうした場合に、住宅取得等資金の贈与に関する非課税の特例制度の活用を検討する価値があると思います。令和6年1月1日から令和8年12月31日までは、500万円又は1000万円の非課税枠がありますが、千万単位の多額の現金の贈与をするよりも、むしろ200万円~300万円程度でも資金の贈与をした場合、少なくとも住宅取得等の後押しができると思います。住宅ローン金利が、まだまだ低い状態が継続しておりますので、住宅取得等に関する頭金の目途さえ立てば、マイホームが取得できる可能性が高くなると考えられます。ぜひ、この特例の検討と活用をすべきだと思います。
なお、この特例の重要なポイントは次のとおりです。
① 父母や祖父母などの直系尊属からの贈与であること。つまり、贈与を受ける者(受贈者)が、贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(血縁又は養子縁組あり)であること。
② 自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、購入、取得、増改築等のための金銭の贈与であること。
③ 贈与を受けた年の1月1日において、受贈者が18歳以上であること。
④ 受贈者の贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2000万円以下であること。(新築等をした住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満である場合は1000万円以下であること。)
⑤ 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、受贈者が住宅取得等資金の全額を新築、購入、取得、増改築等に充てて、その家屋に居住すること。
⑥ 受贈者が贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告をすること(納付税額が0円である形式的な申告書及び一定の添付書類を提出する必要があります)。
その他の詳細につきましては、下記国税庁のホームページを御参照下さい。
「タックスアンサー」贈与税 住宅取得資金の贈与を受けたとき
No.4508 「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
No.4504 「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」
No.4503 「相続時精算課税選択の特例」
「パンフレット・手引」 相続税・贈与税関係 【住宅取得等資金の特例】
(あらまし)「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし(令和6年5月)」
(チェックシート)「住宅取得等資金の贈与税の特例に係るチェックシート」(令和5年分用) ☆☆
不動産の購入時の契約書や領収証等を紛失し、購入価額(取得費)が不明な場合、譲渡所得税の計算はどうしたらよいか相談を受けるケースがあります。税金(譲渡所得税)は、売却収入から購入代金等を控除した利益(儲け)に対して課税されます。つまり、譲渡所得税の所得金額(儲け)は、譲渡価額(収入金額)から取得費(購入価額等)及び譲渡費用(仲介手数料や測量費等)を控除して計算されるからです。
売却時における契約書や領収証等は、直近の取引であるので紛失することはあまりないため、譲渡価額や譲渡費用が不明になることは少ないと思われます。しかしながら、何十年も前の購入当時の契約書や領収証等は、自宅の建て替え、引越し等により紛失し、取得費(購入価額等)を証明できないケースがあります。こうした場合、譲渡所得金額の計算上、取得費(購入価額等)は、譲渡価格(収入金額)の5%相当額をもって、概算取得費として申告できることになっております。しかしながら、概算取得費は、売却金額の5%相当額でしかありませんので、実際の購入価額より少ないケースが多く、譲渡所得税の負担は、かなり重いものになってしまうと思います。なお、国税庁のタックスアンサー「取得費が分からないとき」も御参照下さい。
ただし、契約書や領収証等以外のもので実際の購入金額を証明や疎明をすることができれば、当然のことですが、実際の購入価額により申告することも可能とされております。つまり、次に掲げる書類や資料等により、取得費(購入価額等)に信憑性があると認められる可能性が高い場合には、譲渡所得の申告が是認されると思われます。
① 売却した不動産が住宅ローン等の借入により購入したものであれば、不動産登記事項全部事項証明書(いわゆる登記簿謄本)の乙区欄において抵当権等の担保設定登記の記録があり、その債権額等により取得費が推定できる場合。
② 住宅ローン等の借入時における金融機関等との契約書や返済予定表等の書類がある場合。
③ 購入当時の預金通帳があり、その預金通帳の入出金履歴により購入金額等を証明できる場合。(金融機関では10年位前までの預金の入出金の記録(取引履歴)を保管しておりますので、有料になりますが明細書の形式でデータをプリントアウトして頂けます。)
④ 購入当時の仲介業者により購入金額を証明してもらえる場合。(仲介業者が契約書の写し等を保管している場合もあります。)
⑤ 購入当時から営業し購入物件についても熟知している不動産業者に対して、購入当時の不動産価格について精通者として、その意見価格となる金額を証明又は疎明してもらえる場合。
⑥ 購入当時の不動産のパンフレット、広告、ちらし等により購入金額を疎明できる場合。
⑦ 購入当時の公示価格や相続税評価額(路線価)により、購入金額が合理的に疎明できる場合。
⑧ ①~⑦に掲げる書類や資料等が存在しない場合、購入当時の取得の経緯、事情、推定価格等を書面(上申書・申述書等)にして、購入金額を疎明し申告書の付属書類として提出する場合。(土地の坪単価や建物の請負金額等がいくらであったかの記憶がある場合)
なお、次の方法などによって推定価格等を算定することにより、説得力のある合理的な取得費である旨を主張することができると思います。
⑴ 土地(推計取得費の計算式)
一般財団法人日本不動産研究所が公表しております「市街地価格指数」を用いて売却時の指数と購入時の指数の比較により取得費を推計する方法。
例えば、今般売却した土地の価額が2000万円の場合において、売却時の指数が80、購入時の指数が40とすれば、2000万円×40/80=1000万円と推定されます。
⑵ 建物(標準的な建築価額表)
「建築統計年報(国土交通省)」の「構造別:建築物の数、床面積の合計、工事費予定額」表を基準にし、1㎡当たりの工事費予定額に売却した建物の床面積を乗じた金額を取得費として推計する方法。
なお、この方法は、毎年国税庁から公表される「譲渡所得の申告のしかた(記載例)」の「土地や建物の譲渡所得のあらましなど【参考2】建物の標準的な建築価額表及び給与所得金額の計算表など」「建物の標準的な建築価額表」にも掲載されております。☆☆
建売住宅、中古住宅、マンションなどのように土地と建物を一括して購入した不動産を売却し、譲渡所得を計算する場合、意外に周知されておりませんが、譲渡所得は土地と建物は別々に計算することになっております。このため、必要経費となる取得費も、「土地の取得価額」と「建物の取得価額」とに区分して計算する必要があります。なお、建物は土地とは異なり、時間の経過によりその価値が減価する資産とされているため、取得価額から償却費相当額を控除した金額が建物の取得費とされております。
不動産の購入時の契約において、土地と建物の価額が区分され、その価額が契約書に記載されている場合には問題はありません。しかしながら、不動産の購入時の契約において土地と建物の価額が区分されていない場合(一括した合計額による記載がされている場合)には譲渡所得の計算が困難になってしまいます。こうした場合の土地の取得価額と建物の取得価額とを区分する方法は、下記などの方法により計算することが認められております。
①時価の割合による区分(原則的方法)
土地と建物の購入時の時価の割合により、土地の取得価額と建物の取得価額を区分することが原則とされております。しかしながら、売却時においても時価の算定は困難とされておりますので、過去の購入時の時価の算定はさらに困難であると思います。このため、以下②の簡便的方法も認められております。
②建物の標準的な建築価額表を基にした区分(簡便的方法)
毎年公表されます「譲渡所得の申告のしかた【参考2】」では、「建物の標準的な建築価額表」が掲載されています。この建築価額表は、建物の建築年別・構造別に1㎡当たりの建築単価が一覧表となっているものです。この表の建築単価は、「建物統計年報(国土交通省)」の「構造別:建築物の数、床面積の合計、工事費予定額」表を基に、1㎡当たりの工事費予定額を算出(工事費予定額÷床面積の合計)したものとされております。建物の取得価額が不明な場合には、この表に該当する建築単価に建物の床面積を乗した金額が建物の取得価額として認められます。さらに、土地の取得価額は、土地と建物を一括して購入した総額から上記により計算した建物の取得価額を控除した価額とすることも認められております。この「建物の標準的な建築価額表」を利用すれば、比較的簡単に建物の取得価額と土地の取得価額の区分が可能になると思います。
なお、建物の取得費を計算する際、非業務用建物の償却費相当額は、取得価額の95%を限度とされておりますので、譲渡所得の計算上、取得価額の5%を建物の取得費とすることができることにも留意すべきかと思います。つまり、どんなに古い建物であっても、取得した時の価額の5%は、取得費(譲渡経費)として計上することが認められております。例えば、新築請負価格が3,000万円の建物でしたら、3,000万円×5%=150万円となります。新築時の請負契約書、見積書、請求書、領収書などは必ず確認すべき事項だと思います。
なお、下記の国税庁のホームページも御参考にして下さい。
「令和5年分譲渡所得の申告のしかた」土地や建物の譲渡所得のあらましなど
【参考2】建物の標準的な建築価額表及び給与所得金額の計算表など、建物の標準的な建築価額表☆☆
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは、個人が自己の居住用家屋(マイホーム)やその敷地(借地権を含む)を譲渡した場合、特別控除として、その譲渡所得(儲け)から3000万円(譲渡所得が3000万円未満であれば譲渡所得金額と同額)が差し引くことが認められております。このため、大幅な節税、若しくは納税額がなくなる可能性もあります。但し、譲渡した年の翌年3月15日までに確定申告をすることが、この特例の条件となっております。
この特例は、居住用の【家屋・建物】を譲渡した場合の特則であり、家屋の【敷地・土地】は付随的な取扱いであることに留意すべきかと思われます。又、譲渡した居住用家屋やその敷地の保有期間は問われず、短期所有物件(譲渡した年の1月1日における所有期間が5年以下の物件)であっても適用されます。ただし、次の要件に該当する場合に適用があることに御留意下さい。
① 現に居住の用に供している家屋を譲渡した場合
◎ 日常生活の本拠地として利用している家屋であること。
・ 別荘等の趣味、娯楽、保養を目的とする家屋ではないこと。
・「現に居住している家屋を2以上所有している場合」には、そのうち主として居住している家屋に限ります。
・ 転勤、転地療養などのため、社会通念上同居することが通常であると認められる配偶者等と離れ、単身で他に起居している場合であっても、転勤、転地療養などの事情が解消した後は、配偶者等と同居すると認められるときは、現に配偶者等が住んでいる家屋についても本特例の適用があります。
◎ 一時的な目的で入居していた家屋ではないこと。
(居住用家屋を新築、改築等する期間中だけの仮住まいとして使用した家屋など)
◎ この特例を受けるためだけに入居した家屋ではないこと。
◎ 事業用の店舗・事務所等との併用住宅の場合、居住用部分だけに適用があり、この区分方法は床面積の割合によります。(事業用部分の床面積割合が10%未満の場合は家屋の全部を居住用とみなすことが可能です。)
② 現に居住の用に供している家屋とともにその敷地(借地権等を含む)を譲渡した場合
◎ 居住用家屋とその敷地の所有者が異なる場合は、原則として家屋だけに特例が適用されます。
◎ 例外的に、居住用家屋とその敷地の所有者が異なっていても、次の要件の全てに該当する場合には、まず3000万円の控除額は居住用【家屋】の譲渡所得から差し引き計算し、控除残額がある場合には、居住用【土地】の譲渡所得から差し引くことができます。
⑴ 居住用土地はその土地上にある居住用家屋とともに譲渡したものであること。
⑵ 居住用土地と居住用家屋の所有者が、親族関係にあり生計を一にしていること。
・ 居住用家屋の譲渡時の現況により判断されます。
・ 居住用家屋が、その所有者の居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡された場合には、居住用家屋の所有者の居住の用に供されなくなった時から、その家屋の譲渡の時までの間の状況により判断されます。
⑶ 居住用土地と居住用家屋の所有者が、その居住用家屋に同居していたこと。
・ 居住用家屋の譲渡時の現況により判断されます。
・ 居住用家屋が、その所有者の居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡された場合には、居住用家屋の所有者の居住の用に供されなくなった時の直前の状況により判断されます。
◎ 借地権等の設定されている居住用底地の譲渡についての取扱い
⑴ 居住用家屋の所有者が、居住用土地である借地権等が設定されている土地の全部又は一部を所有している場合において、その居住用家屋を取り壊し居住用底地を譲渡した場合の本特例の適用については、次の④に準じて取り扱われます。又、居住用底地が居住用家屋とともに譲渡された場合は、居住用家屋及び居住用底地の譲渡について本特例の適用が認められます。
⑵ 居住用家屋の所有者以外の者が、居住用底地の全部又は一部を所有している場合の本特例の適用については、上記②の居住用家屋とその敷地の所有者が異なる場合の取扱いに準じて取り扱われます。
③ 転居時から3年目の年末までに売却した場合(3年目の年末基準)
⑴ 居住の用に供されなくなった家屋を譲渡した場合で、居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合
⑵ 居住の用に供されなくなった家屋とともにその敷地を譲渡した場合で、居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合
④ 居住用土地のみの譲渡で次の要件の全てに該当する場合
⑴ 居住用家屋を取り壊した日から1年以内に、その敷地の譲渡に関する契約が締結され、その敷地は家屋を居住の用に供されくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。
⑵ 居住用家屋の取り壊し後、その敷地の譲渡に関する契約を締結した日までの間、その敷地を駐車場等として貸し付けたり、その他居住用以外の用途に供していないこと。
⑤ 災害により居住用家屋が滅失し、その家屋の敷地を譲渡した場合、その敷地は家屋を居住の用に供されくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
⑥ 居住用家屋や居住用土地等の一部を譲渡した場合
⑴ 居住用家屋の一部を譲渡した場合
居住用家屋の一部を譲渡した後に残存する建物が、機能的にみて独立した建物と認められない場合に限り、本特例の適用があります。従って、残存する建物が独立した住宅として使用することができる場合には、本特例の対象にはなりません。
⑵ 居住用土地等の一部を譲渡した場合
居住用土地等の一部譲渡は、原則として居住用家屋と同時に譲渡した場合に限り、本特例の適用があります。
⑦ その他の留意事項
⑴ 居住用財産の所有者(本人)の譲渡した相手方が、次のいずれかに該当する場合(特殊関係者)には本特例の適用はありません。
◎ 本人の配偶者及び直系血族(娘婿や兄弟などの傍系親族は除かれます)
◎ 本人の親族で譲渡時に生計を一にしている者
◎ 本人の親族で譲渡後に本人と譲渡家屋に同居する者
◎ 本人と内縁関係にある者
◎ 本人と内縁関係にある者の親族で本人と生計を一にしている者
◎ 上記以外の者及び本人の使用人以外の者で本人から受ける金銭等によって生計を維持している者及びその者の親族でその者と生計を一にしている者
◎ 本人と関係のある同族会社
⑵ 居住用財産の譲渡所得の内訳として短期譲渡所得と長期譲渡所得がある場合、3000万円の特別控除額は、まず短期譲渡所得から控除し、なお控除しきれない金額がある場合又は短期譲渡所得がない場合に、長期譲渡所得から控除します。
⑶ 譲渡した年の前年又は前々年に、確定申告で本特例(3000万円控除)の適用を受けた場合には、譲渡した年には本特例の適用はできません。(3年に1回のみ適用可能)
⑷ 税務上のマイホームの買換特例、マイホームの交換特例、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けている場合には本特例の適用はできません。
⑸ 売却した家屋やその敷地について、税務上の「収用等の場合の特別控除」や「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」等の他の特例の適用を受けている場合には本特例の適用はできません。
⑹ 居住用家屋に所有者本人が居住しなくなった場合でも生計を一にする親族が居住する家屋であり、次の要件の全てを充足している場合に限り本特例の適用があります。
◎ 所有者本人が居住用家屋に過去1度は住んでいたこと。
(所有者本人の配偶者が居住している場合には、この要件は不要)
◎ 所有者本人が居住しなくなった日以後、配偶者以外の生計を一にする親族が引き続き譲渡した日まで居住していること。
◎ 所有者本人が居住しなくなった日以後、3000万円特別控除や居住用買換等の税法上の特例を受けていないこと。
◎ 譲渡した日現在において、譲渡した者の居住している家屋は自己所有ではなく、いわゆる借家住まいであること。ただし、譲渡した者の配偶者が引き続き居住している場合には、譲渡した者の単身赴任先の居住用家屋は自己所有でも特例の適用があります。
⑧ 確定申告手続
◎ 確定申告書の「第三表」の「特例適用条文」欄に「措法第35条第1項」と記載すること。(この記載により、本特例の適用を受ける旨の申告となります。)
◎ 「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」を添付すること。
◎ 個人番号(マイナンバー)の制度が導入されたため、住民票(附票)等の添付は不要になりました。ただし、居住用家屋の売買契約日の前日の住所と売却した居住用家屋の所在地が異なる場合、つまり居住の用に供していた事実(マイホームであったこと)が簡易に確認できない場合には、戸籍の附票、除かれた戸籍の附票、住民票の除票等の提出が必要になります。
◎ この特例を受けた場合においても、土地も建物も譲渡の年の1月1日において10年を超えて所有していたものは、居住用財産の譲渡所得の軽減税率の特例の適用も受けられます。
その他、国税庁の「タックスアンサー」の「マイホームを売ったとき」の下記コーナーも御参照下さい。
・ No.3302「マイホームを売ったときの特例」
・ No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
・ No.3308「共有のマイホームを売ったとき」
・ No.3311「家屋と敷地の所有者が異なるとき」
・ No.3314「過去に居住していたマイホームを売ったとき」
・ No.3317「妻子だけが住んでいるマイホームを売ったとき」
・ No.3320「マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」
平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に、被相続人(亡くなった方)の居住していた家屋(被相続人居住用家屋)又は敷地(被相続人居住用家屋の敷地等)を相続又は遺贈により取得した個人が、一定の要件に該当する譲渡をした場合には、居住用財産を譲渡した場合に該当するものとみなして、譲渡所得税の計算上、3000万円の特別控除が適用できることになりました。これにより、この特例を適用して所得税の節税や相続税の納税資金を捻出することも可能になるかと思います。次にこの特別控除が適用される一定の要件をご説明したいと思います。
【要件①】被相続人の居住用家屋(古い居住用の一軒家の空き家)であること
被相続人の居住用家屋とは、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供していた家屋(一つの建築物)で、次の3つの要件の全てを満たすものをいいます。
⑴ 昭和56年5月31日以前に建築された家屋
⑵ 区分所有建物でないこと(建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物、つまり、マンション等でないこと)。
⑶ 相続の開始直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと。(独り暮らしであったこと)
なお、被相続人の居住用家屋は、相続開始後に増築、改築、修繕、模様替えをした部分を含みますが、被相続人の居住用家屋の全部の取壊し又は除却した後にした増築、改築した部分及びその全部が滅失した後にする増築、改築した部分を除きます。
又、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなど、特定の事由により相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった場合でも、一定の要件を満たすときは、その居住の用に供されなくなる直前まで、被相続人の居住の用に供されていた家屋(従前居住用家屋:タックスアンサー3307)は、被相続人の居住用家屋に該当するものとされております。
【要件②】被相続人の居住用家屋の敷地等であること
被相続人居住用家屋の敷地等とは、相続の開始の直前において、被相続人の居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利(借地権等)をいいます。又、従前居住用家屋(タックスアンサー3307)の敷地の場合には、被相続人の居住の用に供されなくなる直前において、被相続人の居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利をいいます。
なお、相続開始直前(従前居住用家屋の敷地の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において、その土地が用途上、不可分の関係にある2以上の建築分(母屋と離れなど)のある一団の土地にあった場合(広大な住宅敷地の場合)には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築分の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。つまり、母屋、離れ、車庫、物置など、一体として居住の用に供していると認められる場合でも、主として居住の用に供されていた一の建築分(母屋部分)のみが、被相続人の居住用家屋として控除の対象になります。又、敷地については、一段の土地のうち、その土地の面積に母屋の床面積割合を乗じた部分のみが、被相続人の居住用家屋の敷地として控除の対象になります。
【要件③】家屋及び敷地等の取得
売却をした人が、相続又は遺贈により、被相続人の居住用家屋及び被相続人の居住用家屋の敷地等を取得したことが、特例の適用をうけるための要件となっております。家屋と敷地等の両者の取得が要件ですので、家屋だけ、敷地等だけを取得した場合には特例の適用を受けることができないことに御留意下さい。
【要件④】譲渡の時期(相続開始時から3年目の年末基準)
被相続人の居住していた家屋とその敷地を、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日(年末)までに譲渡すること。
【要件⑤】特例の対象となる居住用家屋や敷地(耐震リフォーム済家屋や更地)
⑴ 家屋をリフォームした場合・・・被相続人の居住用家屋(耐震リフォーム、耐震基準に適合したもの)とその敷地の譲渡
⑵ 家屋を取壊した場合・・・被相続人の居住用家屋の全部の取壊・除去・滅失した後のその敷地(更地)の譲渡
※ この特例の特徴は【家屋をリフォームする】場合と【家屋を取り壊す】場合の2パターンあることです。
【要件⑥】譲渡資産の利用制限(居住専用)
⑴ 被相続人の居住用家屋とともにその敷地を譲渡する場合
相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用又は、居住用に供されたことがないこと。
⑵ 被相続人の居住用家屋の取り壊し後のその敷地を譲渡する場合
被相続人の《居住用家屋》を相続の時から取り壊しの時まで事業用、貸付用又は、居住用に供されたことがないこと。
被相続人の居住用家屋の《敷地》を相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用、建物又は構築物の用に供されたことがないこと。
【要件⑦】譲渡の時までの家屋の取壊等
被相続人の居住用家屋の全部の取壊・除却・滅失した後に、被相続人居住用家屋の敷地を譲渡することが要件とされております。つまり、家屋の取壊等をした後の譲渡とは、その譲渡の時までに家屋が取壊等がされていなければならないことになります。税法上、この譲渡の時とは、売買契約の効力発生日又は資産(敷地)の引き渡し日(残金決済日:売買代金の精算日)とされ、そのいずれかの日を納税者は選択できます。このため、家屋の取壊等は、売買契約の効力発生日又は資産の引き渡し日より前にする必要があります。一般的な譲渡所得の申告は、資産の引き渡し日を譲渡の日として申告致しますので、売買契約後に家屋の取壊等をした場合でも,資産の引き渡し日より前であるので、本特例を適用することができます。一方、売買契約の効力発生日を譲渡の日として申告する場合には、譲渡の後に家屋を取壊等したことになるので、本特例を適用することができません。
なお、令和5年度の税制改正では、要件が一部緩和され、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に当該被相続人の居住用家屋の全部の取壊等をした場合、又は当該被相続人の居住用家屋が耐震基準に適合することとなった場合も含まれることになりました。この適用時期は、令和6年1月1日以後に行う被相続人の居住用家屋又は被相続人の居住用家屋の敷地等の譲渡について適用されます。
【要件⑧】売却代金が1億円以下であること(譲渡価額要件:1億円以下)
相続の時からこの特例の適用を受けて、被相続人の居住用家屋やその敷地を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日(年末)までの間に、分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金が、1億円以下であることが要件とされています。このため、被相続人の居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却する場合や、他の相続人が売却する場合には留意が必要です。もし、売却代金の合計金額が1億円を超えた場合には、本特例の適用が全くできなくなるため、修正申告書の提出と納税が必要になります。
【要件⑨】共有で相続等した場合
この特例は、被相続人の居住用家屋とその敷地を相続又は遺贈により取得した個人ごとに適用の可否が判定されます。このため、被相続人の居住用家屋とその敷地を共有で相続又は遺贈により取得した場合でも、上記①~⑤までの適用要件を充足する場合には、共有者の各人ごとに3,000万円控除の適用が受けられます。ただし、共有者全員の譲渡対価の合計金額が1億円以下の場合に限られますので御留意下さい。なお、令和5年度の税制改正では、相続人の数が3人以上である場合における特別控除額は各2,000万円に限定されました。
【要件⑩】その他の留意点
◎ この特例の適用は1回のみ受けられます。
◎ この特例は、売却した家屋や敷地について相続税の取得費加算の特例や収用等の場合の特別控除など他の税務上の特例の適用を受けないことが条件となっております(選択適用)。
◎ この特例は、自己居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除又は自己居住用財産の買換え等に係る特例措置のいずれかとの併用も可能です(併用可能)。
◎ 譲渡先が特殊関係者(配偶者、内縁関係者、直系血族、同族会社)でないこと。
◎ 店舗兼事務所等の兼用住宅の場合には、居住の用に供されていた部分(面積按分)のみが特例の対象になります。
【要件⑪】適用を受けるための手続
この特例を受けるためには、次の区分に応じた必要書類を添付して確定申告書を提出しなければなりません。
⑴ 被相続人の居住用家屋のみ、又は居住用家屋とともにその敷地を譲渡した場合
① 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
② 登記事項証明書・・・次の3つの事実を証明するもの(土地・建物)
☆ 相続又は遺贈により取得した家屋と敷地(建物及び土地の取得)であること。
☆ 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
☆ 区分所有建物登記がされていない家屋であること。
③ 被相続人居住用家屋等確認書・・・市区町村長が次の事項を確認した書類
・ 相続の開始の直前(従前居住用家屋の場合は、被相続人の居住の用に供されなくなる直前)において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
・ 被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等が相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていなかったこと。
・ 被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数
④ 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書のコピー
⑤ 売買契約書等のコピー(売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの)
⑵ 被相続人の居住用家屋の取り壊し後のその敷地を譲渡した場合
① 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
② 登記事項証明書・・・次の3つの事実を証明するもの
☆ 相続又は遺贈により取得した家屋や敷地であること。
☆ 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
☆ 区分所有建物登記がされていない家屋であること。
③ 被相続人居住用家屋等確認書・・・市区町村長が次の3つの事項を確認した書類
☆ 相続の開始の直前において、被相続人が被相続人居住用家屋を居住の用に供しており、かつ、被相続人居住用家屋に被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
☆ 被相続人居住用家屋が相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
☆ 被相続人居住用家屋の敷地等が次の2つの要件を満たすこと。
・ 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと。
・ 取壊し等の時から譲渡の時まで建物又は構築物の敷地の用に供されたことがないこと。
④ 売買契約書等のコピー(売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの)
★ 国土交通省HPの「空き家の発生を抑制するための特例措置」も御参照下さい。
★ 国税庁HPの下記のタックスアンサーも御参照下さい。
No.3306 「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
★ 富士市HPの「空き家の譲渡所得の3000万円の特別控除に係る確認書(被相続人居住用家屋等確認書)の交付について」も御参照下さい。
★ 被相続人居住用家屋等確認書の発行窓口
・ 富士市 都市整備部 住宅政策課 ☎ 0545-55-2817
・ 富士宮市 都市整備部 住宅政策課 住宅管理係 ☎ 0544-22-1163
★【Word文書】をダウンロード → 「被相続人居住用家屋等確認書」
★【Word文書】をダウンロード → 「耐震基準適合証明書」☆
税務上の判断をする際に土地の時価相当額(相場)が、いくら位になるのか知りたい方は多いと思います。精度の高い時価評価額は、不動産鑑定士や不動産業者等に依頼しなければなりません。しかしながら、これらの専門家に依頼した場合、コストの問題が発生し、時間もかかってしまいます。簡易な方法で素早く、土地(宅地)の時価の概算額が把握できる方法はないものでしょうか。毎年公表されております国税局の路線価や固定資産税評価額から、土地(宅地)の時価の概算額を計算する方法を考えてみたいと思います。なお、地価公示価格や地価調査価格が近隣にあれば、これらの価格を参考にすればよいと思いますが、近隣にこれらの価格が公示されない場合が多いのが現状です。なお、地価公示制度につきましては、国土交通省「地価公示」「地価公示制度の概要」を御参照下さい。
平成3年12月19日、政府税制調査会の平成4年度の税制に関する答申における”相続税負担調整の基本的考え方”では国税庁から次の報告がなされました。「・・・国税庁は、土地の相続税評価に関し、地価公示価格を基準として評定するとの考え方に立って、平成4年分の評価から、・・・評価割合を地価公示価格水準の80%程度に引き上げることにより、その適正化を図る・・・」その後、平成4年1月10日の閣議では「平成4年度税制改正の要綱 相続税等の負担調整 土地の相続税評価の評価割合を地価公示価格水準の8割程度に引き上げる等の適正化に伴う相続税等の負担調整を・・・行う。」旨の閣議決定がなされました。
又、平成4年1月22日自治固第3号では「固定資産評価基準の取扱いについて」の依命通達の一部が改正され、自治省告示第158号において”固定資産評価基準(土地) 第1章土地 第12節経過措置では「宅地の評価において・・・地価公示価格・・・の7割を目途として評定するものとする。」とされました。
以上、相続税における宅地の評価は、地価公示価格水準の8割を目途にするものとされ、固定資産税における宅地の評価は、地価公示価格水準の7割を目途にするものとされました。つまり、相続税における国税局が毎年公表している路線価(財産評価基準書)は、地価公示価格水準の80%を目途に算定されており、固定資産税における固定資産税評価額は、地価公示価格水準の70%を目途に算定されております。これらのことから、国税局が公表している路線価及び市区町村長が算定している固定資産税評価額を基準にして、宅地の時価評価(相場の算定)をすることが可能になると考えます。
以下、例示により説明をして参ります。
① 相続税の路線価
評価したい宅地の相続税路線価は、地価公示価格水準の80%相当とされておりますので、相続税路線価を80%で割り戻した数値が推定される地価公示価格(時価相当額)になると考えます。
評価したい宅地の相続税路線価1㎡単価金80,000円の場合
80,000円÷80%=100,000円となり、地価公示価格水準いわゆる時価に相当する概算額は1㎡当たり100,000円(坪単価約330,000円)となります。
なお、相続税「路線価」とは財産評価基本通達14において「宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定され、その路線ごとに評定した1㎡当たりの価格」とされております。
② 固定資産税評価額
評価したい宅地の固定資産税評価額は、地価公示価格水準の70%相当とされておりますので、固定資産税評価額を70%で割り戻した数値が推定される地価公示価格(時価相当額)となると考えます。
評価したい宅地の固定資産税評価額1㎡単価金77,000円の場合
77,000円÷70%=110,000円となり、地価公示価格水準いわゆる時価に相当する概算額は1㎡当たり110,000円(坪単価約363,000円)となります。
③ 公示価格(地価調査価格)対比評価額
まず、評価したい宅地の近隣の公示価格標準地(地価調査基準地)を抽出します。次に【抽出した公示価格標準地の相続税路線価1㎡単価】と【評価したい宅地の相続税路線価1㎡単価】とを対比します。【評価したい宅地の近隣の公示価格標準地の公示価格】に対比した比率を乗ずれば【評価したい宅地の推定される公示価格(時価に相当する概算額)】が算定することができると思います。
⑴ 評価したい宅地の近隣の公示価格標準地の公示価格1㎡単価130,000円の場合
⑵ 評価したい宅地の近隣の公示価格標準地の相続税路線価1㎡単価100,000円の場合
⑶ 評価したい宅地の相続税路線価1㎡単価80,000円の場合
⑷ ⑵と⑶を対比した比率・・・80,000/100,000=0.8
⑸ 評価したい宅地の推定される公示価格1㎡単価・・・130,000円×0.8=104,000円
④ 上記①~③の平均値
相続税の路線価、固定資産税評価額、公示価格(地価調査価格)の算定方法は、微妙に異なりますので、当事務所では上記①、②、③の平均値をもって、時価に相当する概算額と考えております。
(100,000円+110,000円+104,000円)÷3≒104,000円となり、地価公示価格水準いわゆる時価に相当する概算額は1㎡当たり104,000円(坪単価約343,000円)となります。
☆ 地価公示価格及び地価調査価格につきましては、「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」を御参照下さい。
☆ 相続税の路線価につきましては、「国税庁:路線価図・評価倍率表」を御参照下さい。
☆ 固定資産税の路線価につきましては、「全国地価マップ」を御参照下さい。☆
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)を受けていた方が、年の中途において自宅を売却した場合、この特別控除の適用をその年において受けることができるのでしょうか。この自宅を売却した方は、この特別控除の要件の1つ(特別控除を受ける年の12月31日まで対象となる家屋に住んでいること)に該当しなくなります。このため、自宅を売却した年分の住宅借入金等特別控除の適用は残念ながら受けることができません。
住宅借入金等特別控除を受けるための要件として、家屋の新築、建築後使用されたことのない住宅(建売住宅)の取得、既存住宅(中古住宅)の取得、認定住宅の新築、建築後使用されたことのない認定住宅(認定建売住宅)の取得、自己の家屋の増改築等をした者が、その家屋又は増改築等をした部分に、その新築の日・取得の日・増改築等の日から6ヶ月以内に入居し、かつ、この特別控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していることが要件とされております。(租税特別措置法第41条)従って、年の中途において自宅を売却した場合、その年の12月31日には居住していないため、住宅借入金等特別控除の適用は受けられないことになります。
しかし、居住していた者が年の中途で死亡したり、家屋が災害により居住することができなくなった場合、死亡した日又は災害により居住することができなくなった日まで引き続き居住していたときは、その年分についての住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。ただし、住宅借入金等特別控除額の計算の基礎となる住宅借入金等の金額は、死亡した日又は災害により居住することができなくなった日現在のものとなります。又、災害とは、震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火、その他の自然現象の異変による災害、鉱害、火薬類の爆発、その他の人為による異常な災害、害虫、害獣、その他の生物による異常な災害をいいます。
又、東日本大震災により、住宅借入金等特別控除の対象となっていた家屋が、居住することができなくなった場合、その翌年以降も住宅借入金等の金額があるときは、その翌年分以降の残存する適用年においても、引き続き住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。なお、東日本大震災により、自宅を売却した方は、居住用家屋を売却したので、特例として譲渡所得税の「3000万円の特別控除(租税特別措置法第35条)」の適用も受けることができます。(原則として住宅借入金等特別控除と3000万円の特別控除の併用適用はできません。)
国税庁HPの下記の「タックスアンサー」「質疑応答事例」も御参照下さい。
No.1213 「住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
No.1214 「中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
No.1216 「増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
No.1221 「認定住宅の新築等をした場合(認定住宅新築等特別税額控除)」
No.8013 「災害を受けたときの住宅借入金等特別控除の適用期間の特例等」
No.3302 「マイホームを売ったときの特例」
質疑応答事例「住宅借入金等特別控除の適用を受けていた者が死亡した場合」
質疑応答事例「災害により引き続き居住できなかった場合」 ☆
国税庁が毎年公表しております「相続税の申告のしかた」の4頁には、次のQ&A「家族名義の財産は?」との記述があります。まず、このQ&Aから、国税庁は、どのようなものが相続財産であり、申告する必要がある財産であるかについて簡潔に解説しており、相続財産についての基本的な考え方が開示されていると思います。
【Q&A 家族名義の財産は?】
問:「父(被相続人)の財産を整理していたところ、家族名義の預金通帳が見つかりました。この家族名義の預金も相続税の申告に含める必要があるのでしょうか。」
答:「名義にかかわらず、被相続人が取得等のための資金を拠出していたことなどから被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。したがって、被相続人が購入(新築)した不動産でまだ登記をしていないものや、被相続人の預貯金、株式、公社債、貸付信託や証券投資信託の受益証券等で家族名義や無記名のものなども、相続税の申告に含める必要があります。」
【PDF文書】をダウンロード →「相続税の申告のしかた(令和4年分用)」
その他参考事例 国税庁HP 相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集
【PDF文書】をダウンロード → 「被相続人以外の名義の財産(預貯金)」
【PDF文書】をダウンロード → 「保険事故が発生していない生命保険契約」
上記Q&Aの答のとおり、被相続人名義の財産以外にも名義人は被相続人ではありませんが、その実質は被相続人の財産であると考えられるものについても、相続財産として相続税が課税されることになります。
例えば、「何年も前に名義を変えたので、その時点で贈与となり、被相続人の財産ではないと思います。従って、相続財産として申告する必要はないのではないか?」という疑問の声があります。名義を変えた時点において、「贈与」契約が成立していれば、相続財産ではなくなりますので、相続税の課税対象とはなりません。しかし、単に名義を変更しただけのいわゆる「借名財産、名義財産等」については、「贈与」契約は成立していません。このため、依然として財産の実質的な所有者は、被相続人であるということになり、相続税の課税対象財産となります。ここで「贈与」、「借名財産、名義財産等」とは、法律的にどのようなものであり、相続税の課税対象財産との関係について考えてみましょう。
「贈与」契約の成立要件
「贈与」とは、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって成立する契約です。つまり、贈与者が自分の財産を相手方に「あげますよ。」という意思表示をし、相手方である受贈者が「いただきます。」という受諾の意思表示をし、相互に意思が合致することによって、贈与契約が成立します。従って、贈与者の一方的な贈与の意思表示だけでは、贈与契約は成立しないため、贈与をしたつもりの財産であっても、その財産は贈与者本人に帰属したままになっております。又、贈与契約は、口頭による意思表示でも成立しますが、口頭の契約では後日において贈与の事実の確認(主張)ができないことにもなりかねません。このため、贈与契約が成立した証拠を残すため、贈与者及び受贈者両者の署名押印による「贈与契約証書」等の書面を作成する必要があると思います。
【PDF文書】をダウンロード →「贈与契約証書(通常型)」
【PDF文書】をダウンロード →「贈与契約証書(法定代理型)」
「借名(しゃくめい)財産、名義財産等」
贈与とは、上記で御説明した要件を満たしたことにより成立する契約です。この要件を満たさない行為は、法律上も税務上も贈与とはなりません。御本人は贈与したつもりであっても、贈与にはなっておらず、贈与したつもりの財産の帰属は贈与者本人にあるということになります。こうした場合の御本人の財産は、「借名財産、名義財産等」と呼称されることになってしまいます。
借名財産、名義財産等のうちの預貯金については、借名預金、名義預金等と呼称されます。「借名預金、名義預金等」とは、通帳等の名義人は、子や孫などの名義になっておりますが、その資金の源泉は名義人以外の方から拠出されたものである預貯金のことを言います。親が、預貯金について、単に子や孫などの名義を借用したり、子や孫などの名義に変更したりして、保有し、管理や運用も継続されている場合があります。こうしたケースでは、贈与契約は成立しておりません。又、子や孫などの実際の収入状況などから判断して、不相当に高額な財産を保有していることになれば、「借名預金、名義預金等」として、真の所有者(親)の財産であると判断されます。
借名預金、名義預金等は、実際に資金を移動する時に、税務当局から指摘されることはほとんどありません。しかし、相続税等の税務調査の際に、被相続人以外の家族名義の預貯金等も調査対象にされ、「借名預金、名義預金等」として判断されるものについては、被相続人の遺産として相続財産に追加的に計上しなければならず、これにより相続税も増加し、さらなる納税を求められることになります。
こうした将来的に税務調査がおこなわれる場合には、多大な精神的負担と想定外の課税関係が生じますので、家族間で名義変更や贈与をする時には、くれぐれも「借名財産、名義財産等」と判断されない様に御留意する必要があると思います。 ☆
【障害者控除の概要】
所得税法上の障害者控除(所得控除)とは、「納税者自身」、「納税者の同一生計の配偶者(納税者の配偶者でその納税者と生計を一にするもの(青色事業専従者等を除く。)のうち、合計所得金額が38万円以下である者をいいます。)」、「扶養親族」が、下記の【所得税法上の障害者】に該当する場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の障害者である扶養親族にも適用されます。又、障害者控除額は以下のとおりです。
① 一般障害者 控除額27万円
② 特別障害者 控除額40万円
③ 同居特別障害者 控除額75万円
なお、同居特別障害者とは、特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方です。
【所得税法上の障害者】
所得税法上の障害者は、次のいずれかに該当する人です。
⑴ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人(特別障害者となります。)
⑵ 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人(重度の知的障害者と判定された人は特別障害者となります。)
⑶ 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人(障害等級が1級と記載されている人は特別障害者となります。)
⑷ 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人(障害の程度が1級又は2級と記載されている人は特別障害者となります。)
⑸ 戦傷病者手帳の交付を受けている人(障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までと記載されている人は特別障害者となります。)
⑹ 原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている人(特別障害者となります。)
⑺ いつも病床についていて、複雑な介護を受けなければならない人(特別障害者となります。)
⑻ 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が⑴、⑵又は⑷に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人(⑴、⑵又は⑷に掲げる人のうち特別障害者となる人に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人は特別障害者となります。)
【障害者控除対象者の認定】
近年、高齢化が加速し要介護者や認知症患者が増加しております。所得税法では、「要介護者」及び「認知症患者」を障害者であると直接的に規定していないので、こうした方々を扶養する方は、所得税の障害者控除の適用が受けられないものと判断されがちです。しかし、障害者手帳等の交付を受けていない方であっても、65歳以上の人で障害の程度が知的障害者又は身体障害者に準ずると認められた場合、すなわち障害者控除対象者に認定された場合には、所得税、市民税、県民税の所得控除の適用を受けることができます。 この障害者控除対象者の認定は、市区町役場又は福祉事務所に所定書式による申請をし、「障害者控除対象者認定書」が発行された場合には、この書類を所得控除に使用することができます。さらに、過年度の障害者控除対象者に認定されていた場合には、税額の還付を受けることもできます。なお、障害者控除対象者とは、下記【障害者控除対象者の認定】により判断されておりますので、下記の富士市等のPDFも御参照下さい。
【PDF文書】をダウンロード → 富士市「障害者控除対象者の認定」
【PDF文書】をダウンロード → 富士市「障害者控除対象者認定申請書」
【PDF文書】をダウンロード → (参考)「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」
【PDF文書】をダウンロード → (参考)「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」
【障害者控除対象者】・・・上記「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」を御参照下さい。
1.一般障害者の認定
① 対象者の「認知症高齢者の日常生活自立度」が、介護保険法(平成9年法律第123号)の要介護認定に係る主治医の意見書でⅡa、Ⅱb又はⅢa、Ⅲbと判断されている場合。
② 対象者の「障害高齢者の日常生活自立度」が、介護保険法の要介護認定に係る主治医の意見書でA2又はB1と判断されている場合。
2.特別障害者の認定
① 対象者の「認知症高齢者の日常生活自立度」が、介護保険法の要介護認定に係る主治医の意見書でⅣ又はMと判断されている場合。
② 対象者の「障害高齢者の日常生活自立度」が、介護保険法の要介護認定に係る主治医の意見書でB2、C1、又はC2と判断されている場合。
③ 介護保険法の要介護認定を受けていない人で、認定の基準日(12月31日)時点で6ヶ月以上寝たきりの状態にある場合(医療機関に入院しているなど、寝たきりの状態が第三者により証明できる人)。
主治医の意見書とは、所得税、市民税、県民税の所得控除を受けようとする対象年の12月31日(対象年中に死亡した場合は、その死亡日)を認定有効期間に含む要介護認定に係る主治医の意見書とされております。
国税庁HPの下記の「タックスアンサー」「質疑応答事例」も御参照下さい。
No.1160 所得税「障害者控除」
No.4167 相続税「障害者の税額控除」
質疑応答事例 所得税「福祉事務所長の認定を受けていない認知症老人」
質疑応答事例 所得税「障害者控除の適用を受けることのできる年分」 ☆
1.贈与を受けた不動産を贈与直後に売却した場合の贈与税の評価額
親が子供に土地を贈与し、その直後に子供が当該土地を売却し、売買価格と贈与税(相続税)評価額との差額が大きい場合には、どちらの価格により贈与税の申告をすべきでしょうか。土地、建物等の不動産の贈与税(相続税)評価額は、実際の売買価格と比較してかなり低額である場合が多いので、この様な疑問が生じます。
原則として、子供の納付すべき贈与税額は、その土地の相続税(贈与税)評価額により申告することになります。しかしながら、例えば、親が子供に土地を贈与したものとして名義変更登記をし、その土地の売買契約を子供の名義で行ったとしても、実際の売買交渉や売買契約手続を親が行った場合には、子供が受ける実質的な利益は土地そのもの(物)ではなく、土地の売買代金(債権)そのものであると言えます。こうした事実関係がある場合には、子供が贈与により取得した財産的価格(価値)は、土地の相続税(贈与税)評価額ではなく、土地の売買代金となります。このため、子供の贈与税の申告は、土地の売買代金相当額(売買代金請求権)により申告することになります。一方、土地売買の交渉や契約手続を子供が行った場合には、子供が贈与により取得したものは土地そのもの(物)ですので、子供の贈与税の申告は、土地の相続税(贈与税)評価額により申告することになります。(つまり、土地が高額に売却できた場合は子供の努力、労力、交渉の成果であるとも考えられるからです。)従って、親子間の恣意的な贈与契約があり、贈与税評価額の価格操作があると疑われる可能性がある場合には特に留意し、「売買契約の事実関係」に基づいた贈与税及び所得税の申告をしなければならないと思います。
なお、土地の売買代金相当額(売買代金請求権)により子供が贈与税を申告することになる場合、土地の実質的な譲渡者は親になるため、子供は譲渡所得の申告をする必要はなく、親が譲渡所得の申告をすることになると思います。
2.相続した不動産を相続直後に売却した場合の相続税の評価額
親の死亡により子供が遺産である土地を相続し、その直後に子供が当該土地を売却し、売買価格と相続税評価額との差額が大きい場合には、どちらの価格により相続税の申告をすべきでしょうか。土地、建物等の不動産の相続税評価額は、実際の売買価格と全く異なる場合が多いので、この様な疑問が生じます。
原則としては、子供の納付すべき相続税額は、その土地の相続税評価額により申告することになります。親が死亡する直前に、その土地の売買契約の交渉中であったり、売買契約の交渉がおおむね完了していた段階で親の相続が発生した場合においても、相続時に売買契約は締結されておらず、所有権移転登記申請手続もされていないものは、相続税の申告上、財産基本通達に定める方法によって評価した価額(相続税評価額)によることとされております。
なお、土地又は建物等の売買契約締結後、引渡し日前に当該契約の売主又は買主に相続が開始した場合の取扱いについて、国税庁は平成3年1月11日付資産税課税情報第1号を公開しておりました。これによりますとその概要は次のように取り扱うこことされております。
土地又は建物等の売買契約の締結後、当該土地又は建物等の売主から買主への引渡し日前に当該売主又は買主に相続が発生した場合には、当該相続に係る相続税の課税上、当該売主又は買主たる被相続人の相続人が、当該売買契約に関し当該被相続人から相続により取得した財産及び当該被相続人から承継した債務は、それぞれ次によります。
①売主に相続が開始した場合には、相続により取得した財産は、当該売買契約に基づく相続開始時における残代金請求権とします。
②買主に相続が開始した場合には、相続により取得した財産は、当該売買契約に係る土地又は建物等の引渡請求権等とし、当該被相続人から承継した債務は、相続開始時における残代金支払債務とします。又、当該土地又は建物等を相続財産とする申告(相続税財産評価基本通達により評価した価額)があったときはこれを認めることとされております。
3.法令・通達等
相続税法第22条では、「・・・相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、・・・」と規定されております。さらに、財産評価基本通達1⑵の時価の意義では「財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期・・・において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」と規定されております。これらのことから、相続・贈与により取得した財産の価額は、相続・贈与時の相続税(贈与税)評価額によるものとし、相続税(贈与税)の申告することが原則的な取り扱いとなっております。
なお、「タワーマンション」の評価について、最高裁判所は、財産評価基本通達による評価額ではなく、実勢価格(実際の売買価格)によるべき旨の判決を出したことは留意すべきだと思います。又、令和5年度の税制改正では、この「タワーマンション」の新たな評価方法が規定されることになりました。☆
負担付贈与の課税関係について ☆
親が子に自宅(建物)を贈与する場合、親の住宅ローンが残っていることがあります。建物を子に贈与し、住宅ローンも子に負担してもらいたいケースも多いかと思います。この場合の贈与は「負担付贈与」と言われておりますが、親と子の課税関係はそれぞれどのように考えたら良いのでしょうか。税務上の問題点はどこにあるのか、具体例により下記に考察してみたいと思います。
(例)下記親名義の建物を子に住宅ローン全額の負担付きで贈与する場合
建 物 居宅 木造 築20年
請負金額 2,500万円(新築時 購入金額)
住宅ローン残債 1,000万円(贈与時 債務残高)
時価査定金額 800万円(贈与時 時価相当金額)
【受贈者(子)の課税関係】
子は建物の贈与をうけるので、贈与税の課税関係を検討しなければなりません。留意点として、負担付贈与の場合の建物は、財産評価基本通達に基づく贈与税評価額ではなく、通常の取引価額(時価相当額)を評価額とすることにあります。本事例では、負担金額が多いので贈与税の課税はありませんし、申告も不要となります。(個別通達 平成元年3月29日直評5 直資2-204)
時価相当額-負担金額 =贈与税課税対象金額
800万円 - 1,000万円 =△ 200万円 ∴ 贈与税0円
【贈与者(親)の課税関係】
所得税法第36条第1項( )書では、所得税を計算するときの収入金額には金銭で収入するもののほか、「金銭以外の物又は権利その他の経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額」を含むとされております。従って、負担付贈与は、親が子に住宅ローン相当額で建物を譲渡したことになるので、みなし譲渡所得税の課税関係を検討しなければなりません(参考 最判昭和63年7月19日第三小法廷判決)。本事例では、取得費が多いので所得税の課税はありませんし、申告も不要となります。
負担金額(収入金額)- 取得費 =みなし譲渡所得税課税対象金額
1,000万円 - 1,105万円=△ 105万円 ∴ 譲渡所得税0円
※ 取得費
償却率 居宅 木造 耐用年数 22年(22年× 1.5倍=33年・・・0.031 )
償却費 購入金額 ×0.9×償却率×経過年数
2,500万円 ×0.9×0.031 ×20年 =1,395万円
取得費 2,500万円- 1,395万円=
1,105万円
【債務免除益の懸念】
親は、時価相当額 800万円の建物を住宅ローンの残債 1,000万円の負担を付けた贈与をするので、差額 200万円( 1,000万円- 800万円= 200万円)は債務免除益(子から親へのみなし贈与)になるかとも考えられます。つまり、親は200万円のローンの負担がなくなり、子に200万円を負担してもらうことになります。しかしながら、贈与者(親)の税務上の課税関係は、上記のとおり「みなし譲渡所得 所得税の課税」となりますので、あくまでも私見ですが、贈与税の課税関係は生じないことになり、債務免除益そのものを考慮する必要がないと思います。つまり、建物の時価相当額は、不動産業者の時価査定額の800万円が適正であるのか、取得費の1,105万円が適正であるのか、鑑定評価額が適正であるのか、などの問題もあり、時価相当額の認定が困難であると考えられるためです。ただし、建物の適正な時価相当額が800万円であると判断された場合には、200万円の債務免除益は贈与税の課税対象になると思います。
国税庁HPの下記の「タックスアンサー」「質疑応答事例」も御参照下さい。
No.4426 贈与税「負担付贈与に対する課税」(その1)
No.4426 贈与税「負担付贈与に対する課税」(その2)
関連する法令等
① 所得税法第36条第1項
② 相続税法基本通達21の2-4
③ 平成元年3月29日直評5 直資2-204「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」)
④ 最判昭和63年7月19日第三小法廷判決 ☆
民法第768条第1項では、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」とされております。この離婚にともなう財産分与請求権によって取得した財産は、対価の支払いのない無償による財産の移転となります。このため、贈与税などの税金が課税されることになるのでしょうか。この点について、相続税法基本通達9-8では、「婚姻の取消又は離婚による財産の分与によって取得した財産(民法第768条(財産分与))・・・については、贈与により取得した財産とはならないのであるから留意する。」とされております。つまり、財産分与は贈与契約ではないため、贈与税は原則として課税されない旨が明らかにされております。
次に、民法第768条第2項では、「前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。」とされております。つまり、離婚にともなう財産分与の協議が当事者間の話し合いで解決できない場合には、【家庭裁判所に財産分与の協議に代わる処分の請求(財産分与請求調停)】をすることができるとされております。しかしながら、財産分与の請求は、離婚の時から2年が経過した場合、家庭裁判所にすることができなくなってしまいます。
それでは離婚をした時から2年が経過してしまった場合に、財産分与の請求(財産分与そのもの)をすることができなくなってしまうのでしょうか。この点について、民法の条文上では、家庭裁判所に財産分与の申立ができなくなるだけあって、当事者双方が合意の上、財産分与の協議をすることは可能であるとされております。(参考:法務省民事局 離婚を考えている方へ「財産分与」Q4、日本弁護士連合会 2023年2月16日「家族法制の見直しに関する中間試案」に対する意見書 68頁)従って、離婚後、2年を経過した後の財産分与の協議によって取得した財産についても、民法第768条の規定に基づいた財産分与であれば、相続税法基本通達9-8の適用があり、贈与税は原則として課税されないことになります。
また、相続税法基本通達9-8、但書では、「その分与に係る財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額、その他一切の事情を考慮しても、なお過当であると認められる場合における当該過当である部分、又は、離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となるのであるから留意する。」とされております。つまり、財産分与は、原則として贈与税が課税されませんが、夫婦であった時の財産の清算額・離婚後の生活保障額・慰謝料などが過分である場合や、実体が贈与税や相続税を免れる手段として行った場合には贈与税の課税対象にすることが明言されております。
一方、所得税基本通達33-1の4では、「民法第768条(財産分与)の規定による財産の分与として、資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時において、その時の価額により、当該資産を譲渡したこととなる。」とされております。つまり、財産を分与した者は、分与した財産を、分与した時の時価により、財産を分与した者に対し譲渡したものとみなして、譲渡所得が課税されることになります。又、分与した財産が、居住用の土地建物である場合には、「居住用財産を譲渡した場合の特例(3,000万円の特別控除)」の特例対象となります。この財産分与は、離婚成立に伴って実行されるため、財産分与を受けた者は既に配偶者ではない(赤の他人となった)ことから、3,000万円の特別控除の適用が可能となります。
さらに、所得税基本通達38-6では、「民法第768条(財産分与)・・・の規定による財産の分与により取得した財産は、その取得した者が、その分与を受けた時において、その時の価額により、取得したこととなることに留意する。」とされております。つまり、財産の分与を受けた者は、分与を受けた時の時価により、その財産を取得したことになり、贈与や相続の場合のように、財産の分与をした者の取得費を引き継がないことになります。
以上、離婚による財産分与を受けた者については、原則として贈与税は課税されませんが、財産分与をした者については、譲渡所得税が課税されることにご留意下さい。又、以下の国税庁タックスアンサーなどもご参考になるとお思います。
タックスアンサー No.4414 「離婚して財産をもらったとき」
タックスアンサー No.3114 「離婚して土地建物などを渡したとき」
質疑応答事例 「財産分与により住宅を取得した場合」☆
国税庁は、毎年、財産評価基準書を公開しております。静岡県「財産評価基準書」その他土地関係「宅地造成費の金額表」1 市街地農地等の評価に係る宅地造成費では、「市街地農地・市街地周辺農地・市街地山林・市街地原野」を評価する場合における宅地造成費の金額を平坦地と傾斜地に区分して明らかにしております。平坦地の宅地造成費については、基準書の文言どおりに計算することがさほど困難ではないと思います。しかし、傾斜地の宅地造成費については、その留意事項と計算方法にわかりにくい点があり、疑問符(?)がつく点があるのではないかと思いました。そこで、この疑問符がつく点について、解説してみたいと思います。
「宅地造成費の金額表」表2「傾斜地の宅地造成費」(留意事項)(3)では、「傾斜度については、原則として、測定する起点は評価する土地に最も近い道路面の高さとし、傾斜の頂点(最下点)は、評価する土地の頂点(最下点)が奥行距離の最も長い地点にあるものとして判定します。」とされております。この文言を表面的に読みますと、登り勾配の土地についてだけの規定のように思えます。しかしながら、(最下点)という文言がありますので、下り勾配の土地についても規定していることがわかります。(最下点)という文言に絞り(頂点)という文言を削除して読み替えますと「傾斜度については、原則として、測定する起点は評価する土地に最も近い道路面の高さとし、傾斜の最下点は、評価する土地の最下点が奥行距離の最も長い地点にあるものとして判定します。」となります。以上を【上り勾配の場合の傾斜度】と【下り勾配の場合の傾斜度】とに分けて詳細に検討しますと下記のとおりとなります。
【上り勾配の場合の傾斜度】
測定する起点・・・評価対象地に最も近い道路面の高さ
傾斜の頂点・・・評価対象地の奥行距離の最も長い地点にあるものとして判定します。なお、評価対象地に最も近い道路から最も離れた地点に頂点がない場合【途中に頂点がある場合】でも最も長い地点にあるものとみなすことに留意して下さい。
道路面との高低差・・・(最高地点)-(道路面の高さ)
道路からの奥行距離・・・(評価対象地に最も近い道路)の境界から最も離れた地点。
傾斜度・・・(tan-1)×高低差/奥行距離・・・(底辺と高さから角度と斜辺を計算)
なお、不動産登記規則 第100条では、「地積は、水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、・・・」とされ、国税庁 質疑応答事例「財産の評価」(土地評価の総則関係)7 山林の地積では、「水平面積をその山林の地積とします。」とされております。水平投影面積とは、斜面や凸凹を考慮せずに土地がすべて水平だとみなして算出する面積(土地の真上から光を当てた時に影となって写る部分の面積)とされております。従って、公図や測量図などの図面で傾斜度を算定する場合の奥行距離は、図面上の奥行距離と同じになると思います。つまり、傾斜地を三角形に見立てた場合、三角形の底辺が奥行距離になると思います。
【下り勾配の場合の傾斜度】
測定する起点・・・評価対象地に最も近い道路面の高さ
傾斜の最下点・・・評価対象地の奥行距離の最も長い地点にあるものとして判定します。なお、評価対象地に最も近い道路から最も離れた地点に最下点がない場合【途中に最下点がある場合】でも最も長い地点にあるものとみなすことに留意して下さい。
道路面との高低差・・・(道路面の高さ)-(最低地点)
道路からの奥行距離・・・(評価対象地に最も近い道路)の境界から最も離れた地点
傾斜度・・・(tan-1)×高低差/奥行距離・・・(底辺と高さから角度と斜辺を計算)
なお、「傾斜地の宅地造成費」の金額は、整地費、土盛費、土止費の宅地造成に要するすべての費用を含めて算定したものとされておりますが、この金額には、伐採・抜根費は含まれていないことから、伐採・抜根を要する土地については、「平坦地の宅地造成費」の「伐採・抜根費」の金額を基に算出し加算することになっております(留意事 項 ⑴ )。
【国土地理院地図を利用した簡易な傾斜度の求め方】
傾斜度(平均傾斜度)は、水平距離と高低差が分かれば三角関数(tangent)によって算定することができます。国土地理院地図を利用すると、まず、水平距離は、地図上で測定できます。次に、高低差は、評価対象地の「標高(m)」が画面左下に小さく表示されますので、この「標高(m)」を2点測定して高低差を計測することにより、平均傾斜度を求めることができます。又、高低差を計測することにより、平坦地の土盛りや土止めの高さも把握できます。これらのデータを利用することにより、宅地造成費を現地に出向かずに簡便的に計算することも可能だと思います。さらに、国土地理院地図は、白地図としても利用が可能ですので用途は広いと思います。